「成績が良いといじめられる」日本人の特殊性 差異や異質を求める「異年齢学級」の役割

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日本では、「他の生徒にからかわれた」と回答した子どもの割合は、科学リテラシーレベルが高くなるほど増えていく(出所:国立教育政策研究所「PISA2015年調査国際結果報告書『生徒のwell-being』]

要するに、単純な「弱い者いじめ」とは逆で、「出る杭は打たれる」という構図。OECDの調査は、義務教育を終えた直後の15歳の子どもたちを対象にしている。その年齢で、すでに強い「横並び意識」が備わっているとは……。

認識の甘さを痛感しつつも、1つのエピソードを思い出した。先日訪問したある中学校の校長先生によれば、生徒から「褒めないでほしい」と言われることが少なくないそうだ。よくよく聞いてみると皆、「みんなの前で」褒められるのは困るのだという。一人だけ目立ってしまい、仲間はずれにされる可能性が高まるというのだ。

成績の善し悪しだけではない。身の回りのありとあらゆる要素が、「多数派と異なる」だけで簡単にいじめの理由になり得る。

「親や周りからの期待に応えなければならい」というプレッシャーと、「クラスで目立たないようにしなければならない」という同調圧力のはざまで、多くの子どもたちが苦しんでいる。

横並び意識の根底には、「自分たちのコミュニティは均質である」という思い込みがあり、「同じである」ことに安心を求める。そこから「皆と違うことは認められない」「異質なものは排除していい」といった風潮が生まれ、個人のやっかみに大義名分を与えてしまう。

子どもたちを「皆と同じであるべき」といった無意識の思い込みから解放しようとするなら、義務教育のうちに適切な介入が必要だ。

1つの有望な方法が、「異年齢学級」の導入だと筆者は考えている。

“横並び”から子どもを解放「方県なかよしスクール」

異年齢学級は、3学年をまとめて1つのクラスに編成したもので、小学1〜3年生、4〜6年生が1つの教室に年少・年中・年長として混在することになる。今のトレンドとも言える「能力別クラス編成」とはまったく異なる形態だ。

筆者の住む岐阜県にも、異年齢学級を部分的に採り入れている小学校がある。岐阜市立方県(かたがた)小学校では、今年度から「方県なかよしスクール」を開始した。「違いを認め、みんなが幸せになる時間を創る」をテーマに、異年齢グループ単位で、主体的・協働的に学校社会を創る活動を月1回行っている。

それに近いコンセプトの取り組みは、東京都をはじめ全国各地の小学校でも採り入れられている。「なかよし班」と呼ばれ、多くは1〜6年生の縦割りグループ活動だ。

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