AI半導体・NVIDIAが「ひとり勝ち」した納得背景 決算書から見えた「事業シフト」の全貌とは

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続いて、キャッシュ・フローをみてみましょう。

(出所:「100分でわかる! 決算書『分析』超入門 2024」)

当期は純利益が減少したこと(18)が主因となり、営業CFも前期から38.1%減少し7897億円となりました(19)。一方で、投資CFは、前期が約1.4兆円の支出に対し、当期は約1兆円の現金が流入(20)。主因は、有価証券の償還収入が新規購入額を上回り、約1.1兆円が流入したことです(21)。先ほどB/Sで、現金が増え有価証券が減ったのはこのためです。

これにより、フリーCFは1.8兆円のプラスに(22)。このお金を、財務CFで自社株買いに約1.4兆円(23)、配当金の支払いに557億円(24)と、計1.5兆円近く使っています。財務CFの巨額の支出は、大規模な株主還元策が原因だったのです。

次期は大きな飛躍の年、AI市場拡大とともに成長は続く

<投資家はココに注目!>

同社は、ゲーミングからAIの分野へ事業の軸足を巧みに移してきたことで、成長が再加速すると投資家はみている。実際に、2024年第2四半期の売り上げ高は135億ドルで前年同期比2倍へと拡大、特にAI向けGPUを中心としたデータセンター部門は103億ドルで同2.7倍に急増した。

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粗利率は前年の43.5%から70.1%へ大きく上昇。営業利益は68億ドルと前年同期の実に14倍、前年1年間の営業利益をすでに超えており、売り上げ利益ともに過去最高を記録。第3四半期の売り上げは160億ドル前後へ拡大しそうだ。株価指標である予想PERは60倍超と、高い成長期待が反映されている。

佐伯 良隆 グロービス経営大学院教授(ファイナンス)

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さえき・よしたか / Yoshitaka Saeki

早稲田大学政治経済学部卒。ハーバード大学経済大学院修了(MBA)。日本開発銀行(現日本政策投資銀行)にて企業向け融資業務に携わるほか、財務研修の企画および講師を務める。その後、米国投資顧問会社であるアライアンス・バーンスタインで株式投資のファンドマネジャーを務めるなど、金融の最前線で活躍。現在は、グロービス経営大学院教授(ファイナンス)。また、企業の財務アドバイザーを務めている。

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