ワークマン「職人」から「皆さま」へ転換後の誤算 作業着への"原点回帰"で停滞期を脱せるか

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ワークマンが原点回帰に力を入れるのは、職人客の新たな“受け皿”が急浮上したことも影響している。ホームセンター業界を中心に広がっている職人向け「プロショップ」の存在感が高まっている。

近年は、ホームセンター業界3位のコーナン商事が、プロ業態「コーナンPRO」の出店を増やしている。早朝から夜まで営業し、職人客は現場の行き帰りに立ち寄って、資材や工具などを購入する。作業衣料も扱っており、ワークマンに立ち寄らずともこと足りる。

作業衣料はワークマンの独壇場ながらも「ワークマンの店舗から1~2キロ圏内にコーナンPROができると手強い」(土屋専務)と意識せざるをえなくなっている。コーナンPROは120店(5月末時点)を全国展開し、店舗網を積極的に広げている。

競合から固定客を引き戻せるか

今、多くのワークマン店舗では、職人客と一般客が混在するようになっている。ネックとなるのが駐車場だ。滞在時間が長い一般客で駐車場が埋まることで、職人客が入店できない問題はかねて指摘されていた。

「職人客離れ」を防ぐために、店舗近隣に作業服を売らない「ワークマン女子」を出店することで女性客を吸収する算段だったが追いついていないのが現状だ。今後はワークマン女子の店舗を増やして顧客の分離を進めながら、ワーク向け商品を強化することで挽回を期す。

土屋専務は「(ワークマンの挽回には)“働く人”がポイントになる」と力を込める。作業着の専門店として、価格、機能そしてデザインの「三位一体」で再び訴求する。職人客は決まった店に通い続ける傾向が強く、他店から客を奪回するのは容易なことではないが、他店で扱う「安価な定番品」とは一線を画す商品開発で差別化する戦略だ。

そして休日になると一般客が、ガーデニングやDIY用途などでワークマンの作業着を買い求めに来店する。平日の職人客も、週末は一般客としてカジュアル着を買い求める。こうした黄金サイクルに回帰できるかが、「俺たちのワークマン」の次なる飛躍にかかっている。

山﨑 理子 東洋経済 記者

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やまざき りこ / Riko Yamazaki

埼玉県出身。大学では中国語を専攻、在学中に国立台湾師範大学に留学。2021年東洋経済新報社に入社し、現在小売り・アパレルを担当。趣味はテレビドラマのロケ地巡りなど。

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