今回の「ジャニーズ会見」どうにもモヤモヤした訳 東山社長の受け答えなど改善した点もあったものの…

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ところが司会者が会見を締めたあとに、決して小さくない今後の課題が浮かび上がりました。それはマイクを通さずに浴びせられた質問に対する東山社長の「(メディア対応などを行っていた元副社長の)白波瀬さん、やはり説明責任があると思いますので。やはりウチの事務所に携わってくれた人たちに協力を仰ぎたいなと思っていますので、今後また検討していきたいと考えています」という最後のコメント。

「加害者のジャニー喜多川氏と隠蔽した姉・メリー喜多川氏がすでにいない」のは事実でも、「全員が噂話レベルでしか知らなかった」で押し通そうとするのはどうなのか。もし藤島ジュリー景子前社長、東山社長、井ノ原さんが「噂話レベル」で済ませるのなら、ほかに知っている人が会見に出て真実を話さなければ、被害者はもちろん企業や人々は納得できないのではないでしょうか。被害補償や新会社の透明性は期待できる一方で、加害の実態が解明されなければ、「本当に再発防止できるのか」という疑問が残ります。

あらためて、2度目の会見は何のために行われたのか。それを考えていくと、「失敗」と言われた1度目より良かったのは確かですが、いくつか「成功」とは言いがたいところがあります。

2度目の会見はなぜ開かれたのか

9月7日の会見では、社名を変えない方針のほか、被害補償と再発防止策に具体性がなかったことなどが批判を集めました。とりわけ痛恨だったのは、その会見を受けて、多くの企業が「契約更新を行わない」「今後は起用しない」などの厳しい方針を発表したこと。

それを受けたジャニーズ事務所は13日に急きょ文書を発表したものの、依然として被害補償と再発防止策の具体性は十分ではなく、さらに「今後1年間、広告出演並びに番組出演等で頂く出演料は全てタレント本人に支払い、芸能プロダクションとしての報酬は頂きません」などと金銭を引き合いに出し、火に油を注いでしまいました。

そのほかでも、新たな被害者がメディア出演したほか、所属タレントの番組収録が延期されるなどの報道が続出。そんな一連の悪い流れを止めるために2度目の会見が行われたのでしょうが、その狙いが達成できたのかと言えば疑問符が付きます。

企業やテレビ局などが強く求めているのは、被害者の救済と補償を誠実かつ早く終えること。それがほぼ終わるくらいのタイミングでなければ、両者がこれまでのように所属タレントを起用することは難しいでしょう。「11月開始予定」という補償は本当に実現可能で、いつごろまでかかるのか。補償を求める被害者が現時点までで300人以上いて、それぞれに話し合う内容が違う以上、どれだけ時間がかかるのかという不安を感じさせられます。そのメドが話されなかった以上、企業からすれば「早期の契約継続や新規起用は難しい」と言わざるをえないでしょう。

また結局、「新会社のトップを旧体制の重要人物だった東山社長が務めることで、企業から失った支持を再び得られるのか」も現段階では疑問。実際、東山社長は1度目の会見で「ジャニーズ」という社名にこだわるなどの失敗を犯し、「いちタレントで経営の素人」という不安を抱かせてしまいました。

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