ChatGPTなど「生成AI」会社への導入で一番大切な事 「実際に業務に活用してもらう」までが必要だ

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インターネットができてからの約30年、企業は社内システム、社内ネットワークといった『壁』を作ることで、企業の情報財産や社員を守ってきました。それは一方で、社員に不自由を強いることにもなっています。私の願いは、システムやセキュリティの運用管理をAIが行うことで、社内ITを家での電話やLINE、ネットサーフィンと同じ感覚で自由に、しかも安全に利用できる時代が来ることです。

実現したい形は、AIが適切にセキュリティ対策を行い、怪しいアクセスをブロックしたり、社員が問題のある操作を行った場合に、適切な教育を自動的に提供したりすること。このようにAIが防御、活用、教育の3つの役割を果たすことで、社員は安心して、より快適に社内ITを利用できるようになると考えています。

完璧でない部分は適切な運用と教育でカバー

そして、この進化により、従来のIT部門が担っていた役割が変わってくるでしょう。私は、より質の高いITサービスを、より少ない人員で提供できるようになると感じています。これにより、データの活用やセキュリティの問題など、これまでの悩みが減少していくと思います。結論として、ディフェンス面の課題は、このようなAIの活用によって、次第に解消されていくと私は前向きにとらえています。

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――生成AI活用においては、特に情報漏洩などのリスクが危険視されることも多いですが、どのように対応していますか?

鈴木:特に注意しているのは、機密情報や個人情報をAIに渡さないこと、そしてAIが出力する情報をそのまま信じず、適切な判断を下すことです。実際に、ChatGPTの回答をそのままプレゼンテーション資料に取り入れる人が生まれてしまう可能性は完全に否定できませんが、それは決して推奨される方法ではありません。

AIは必ずしも100%正確な答えを出すわけではないので、その点を理解し、適切に活用する必要があります。だからこそ、まずはガイドラインの整備に真っ先に取り組み、全社に向けて公開しました。また、社内向けの勉強会を複数回実施し、1000名近い従業員が参加しています。これにあわせて、AIを特定の領域に特化させて教育することで、誤った情報の出力を減少させる取り組みも進めています。しかし、完璧な方法はまだ見つかっていないので、適切な運用と教育でカバーしていくことが必要だと考えています。

小澤 健祐(おざけん) AI専門メディア「AINOW」編集長

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おざわ・けんすけ / Kensuke Ozawa

日本最大のAI専門メディア「AINOW」の編集長。ディップ株式会社で生成AI活用推進プロジェクトを進めるほか、AI活用コミュニティ「SHIFT AI」のモデレーターとしても知られる。株式会社Cinematorico/COO、株式会社テックビズ/PRディレクター、株式会社Carnot/事業戦略担当、Cynthialy株式会社/顧問、日本大学次世代社会研究センター/プロボノとしても活躍。

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