まるで戦後?「質素すぎる給食」議論起きた諸事情 1食あたり「240円」だと仕方ない気も…?

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これらの情報を頭に入れながら、直近のデータを見てみよう。文部科学省が2023年1月に発表した「令和3年度(2021年度)学校給食実施状況調査」の結果によると、国公私立学校における給食の実施率は95.6%で、完全給食は94.3%だという。

国立・公立・私立ごとのデータもあり、公立小学校は完全給食99.4%(児童・生徒数ベースでは99.8%)、補食給食0.2%(0.1%)、ミルク給食0.1%(0.0%)で計99.7%(99.9%)。公立中学校では完全給食96.1%(95.3%)、補食給食0.3%(0.2%)、ミルク給食1.8%(2.1%)で計98.2%(97.5%)となっている。

「なにを提供するか」に加えて、「どこで作るか」もさまざまだ。小学校は、校内調理の単独調理場方式が46.3%(57.8%)、センターなどでまとめて作る共同調理場方式が52.3%(41.0%)、その他調理方式が1.3%(1.2%)。中学校は単独調理場方式が23.8%(26.2%)、共同調理場方式が61.7%(55.4%)、その他調理方式が14.5%(18.4%)。いずれの調査結果も、都道府県別の統計が出ているので、あわせて読むと興味深いだろう。

人それぞれの「給食像」

(3)ビフォーアフターものの画像は拡散されやすい

ここまで背景をなぞってみると、「あなたの記憶にある『給食像』が、異なるコミュニティーに生活してきた人々の『給食像』と、同じとは限らない」と感じてくるのではないか。そこへ来て、ネットだからこその事情が絡んでくる。「画像で比較しやすい」ことだ。

今回拡散された給食画像でも、時代や地域などが異なる給食写真が、あわせて投稿された。ビジュアルで見せ付けられると、くだんの給食は「たしかに質素すぎるかも」といった印象を受けがちだろう。また、中には海外の給食の写真を投稿する人もおり、「日本は貧しくなった」「円安の影響が給食にも」といった方向でも、話は広がっている。

それだけ「目に見える差」は、人々の興味をひくということだ。読者のなかにもネットサーフィンしていると、「ビフォーアフター」を比較した広告に目が止まり、おもわずアクセスしてしまったことはないだろうか(こうした広告表現は、業界の自主規制や、法律・条例などで制限されているが、今回は横道にそれるので、また別の機会にお話ししたいところだ)。

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