「新しいセンチュリー」このカタチが必然だった訳 グローバルに打って出る初めてのセンチュリー

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ただし、大径タイヤを組み込んだためもあり、最低地上高は185mmとセダンの135mmより50mmも増えた。フロアも高めで、乗り降りにはステップを要する。こうした部分を指摘されて、SUVと言われるのは仕方のないことだ。

フロアは高く明確なステップを持つ(写真:トヨタ自動車)
フロアは高く明確なステップを持つ(写真:トヨタ自動車)

ショーファーカーにこだわるなら、英国生まれの2台も装備するエアサスペンションを用い、停車時には自動的に車高を下げるなどの仕掛けがあったり、フロア構造を工夫して「ジャパンタクシー」並みの乗降性を提供したりしても良かったのではないだろうか。

セダンと大きく違うのはフロント/リアまわりで、灯火類は前後とも上下2段になり、片側4灯ずつのランプを埋め込んだ。センチュリーならではの品格を大事にしつつ、威厳や風格を加えたとのことで、バンパーを含めてかなり力強い印象だった。

押し出しの強さを表現するヘッドライト(写真:トヨタ自動車)
押し出しの強さを表現する4灯ヘッドライト(写真:トヨタ自動車)

ショーファーカーならではの室内

インテリアでまず目が行くのは、やはりリアシートだ。センターコンソールで隔てられたセパレートであり、背もたれは休息時のために最大77度まで倒れるほか、座面チルトやオットマンなど、多彩なアレンジを実現。荷室との間に隔壁を設け、快適性を高めている点も特徴だ。

リアドアより後方にシートがあることからも、荷室より後席空間を重視していることがわかる(写真:トヨタ自動車)
リアドアより後方にシートがあることからも、荷室より後席空間を重視していることがわかる(写真:トヨタ自動車)

操作系では、セダンも装備していたフロントシート間のタワーコンソールのほか、アルファード/ヴェルファイアのそれに似た、スマートフォン風のタッチ式コントローラーも用意される。

それに比べてインパネがシンプルに見えるのも、ショーファーカーならではの仕立てで、リアシートで過ごすオーナーが煩雑に感じないことを第1に考えたためという。インストルメントパネルを水平基調として、スイッチ類はなるべく下のほうに集めたとのことだった。

インストルメントパネルはあえて主張を抑えたデザインとしている(写真:トヨタ自動車)
インストルメントパネルはあえて主張を抑えたデザインとしている(写真:トヨタ自動車)

エンブレムは彫金加工とし、塗装は色塗りと3回の水研ぎを行う4工程で、バンパーなどの樹脂部分も磨き上げを入れるなど、ディテールへのこだわりも特筆できる。このあたりは、国内以上に海外市場で評価されるのではないだろうか。

ちなみにセンチュリーという車名は、初代が豊田佐吉の生誕100周年にあたる1967年に発表されたことにちなんでいる。現行セダンがデビューしたのは2018年だから、56年間で2回しかモデルチェンジしていない。

新しいセンチュリーの発表会場に展示された初代センチュリー(写真:トヨタ自動車)
新しいセンチュリーの発表会場に展示された初代センチュリー(写真:トヨタ自動車)

それがわずか5年で新しいモデルを出してきた理由の1つに、現行セダンと同じ年にカリナンがデビューし、3年前に登場していたベンテイガにPHEVが追加されたことは無関係ではないだろう。

カリナンもベンテイガも、そこにマーケットがあるから生まれた。読みは成功しており、後者は昨年のベントレーの販売の4割以上を占めている。センチュリーをグローバルカーとして、そしてブランドとして進化させていくのに、このボディは必然だったと思っている。

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森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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