ある意味「猪木を越えた」棚橋弘至がそう語るワケ 結局「ストロングスタイル」とは何だったのか?

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プロレス人気回復のため、リング内外で奮闘してきた棚橋さん(写真提供:新日本プロレス)

――人気回復のためにいろいろな取り組みをしてきたと思いますが、特に力を入れたことは?

SNSですね。2012年に新日本プロレスがブシロードグループになってから、選手全員がTwitter(現X)を始めたのですが、僕はその前からInstagramをしていました。ほかにもファッションに特化したWEARやThreads、アメーバブログなどで発信を続けています。

直接の観客動員には繋がらなくても、何かのきっかけで新日本プロレスのポスターや中継を見たとき、棚橋っていう起点がないと(ほかの関心に)流れてしまうかもしれない。(SNSで知ってもらえれば、目を止めてもらえるかもしれないので)そこに関しては僕がパイオニアだなと。コロナもあって、SNSの大切さはより感じています。

――当時は大会前のメディア出演など、プロモーション活動も棚橋さんがほぼひとりで引き受けていたそうです。

そうですね。僕以外に(メディア対応できるレスラーが)いなかったので。ほとんど寝る時間がなかったので、今もショートスリーパーです。僕は150歳まで生きようと思っているのですが、毎日3~4時間くらいしか寝ていないので、早死にしますよね(笑)。

ファンの喜ぶ姿を、リング上から見るとうれしい

――(笑)。その原動力は、自分が新日本プロレスを支えなければ、という使命感でしょうか?

プロレスを楽しんでくれている人の顔を、リング上から見るとうれしくなるんです。僕は「人の喜びを自分の喜びに」という言葉が好きなのですが、例えばテストで100点を取るともちろんうれしい。でも、家に帰って、母ちゃんに「100点取ったよ」と言ったら、すげぇ喜んでくれるじゃないですか。その姿を見るのが、自分のことよりもうれしいんです。

だから試合をして、ファンの喜びを自分の喜びにしたら、「永久電機」ですよ。猪木さんが(アントン・ハイセルで失敗して)作れなかった永久機関を実はもう作っている。猪木超えを果たせたのかもしれません(笑)。

肉体も魂もぶつけ合う熱い試合に、会場は大盛り上がりだ(写真提供:新日本プロレス)

――ただ、奮闘しても、「ストロングスタイル」を期待するファンから「チャラ男」とブーイングを浴びるなど、すぐに実を結ばなかったと思います。どのようにメンタルを保ちましたか?

新日本プロレスのレスラーは海外遠征に行って、様々な経験して試合運びを学んでくることが多いんです。僕は海外遠征を経験していないのですが、日本にいながらブーイングを受けられるのはチャンスだなと、修行の場にしていました。観客をあおると、もっとブーイングが来て、対戦相手に声援が行く。結果、試合が盛り上がるんですね。

『泣いた赤鬼』っていう物語があります。人間と仲良くなりたい赤鬼のために、青鬼があえてヒールを買って出て、赤鬼をいいやつにするんです。僕は青鬼の行動にカタルシスを感じます。自己犠牲の精神というか、あえて悪役を買って出る生き方が好きなんでしょうね。

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