「矢田・首相補佐官」に見る"岸田流したたか戦略" 露骨な連合分断作戦、自公国連立の布石にも

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そもそも、今回の矢田氏起用人事の背景とされる国民民主の連立入り構想は、昨年夏ごろから自民党の麻生太郎副総裁と茂木敏充幹事長が中心になって秘密裏に進められてきたものだ。

とくに、9月2日の国民民主代表選で連立入りに前向きな玉木雄一郎氏が再選されたことで、自民内の「自公国連立構想」が一気に加速。一時は内閣改造で玉木氏を入閣させて一気に連立を目指す戦略も浮上したが、連合内部の強い反発などで見送られたとされる。

そこで岸田首相や麻生、茂木氏ら自民最高幹部が着目したのが、矢田氏の補佐官起用。「水面下で麻生氏と官邸が連携し、矢田氏起用で国民民主や連合との連携を強化し、政策実現を図ることで連立構想を前に進めることを狙った」(同)とみられている。

「賃上げ」を担当させ、民間産別組織の“誘導”も

矢田首相補佐官の担当は、国民民主が強く主張してきた「賃上げ」で、政府筋は「矢田氏が労組側とも協議したうえで、賃上げ政策をまとめる」と説明。これについて自民有力幹部も「矢田氏の関わった政策には、電機連合も国民民主も反対できないはず」とほくそ笑む。

さらに、岸田政権側には「国民民主を支援する電機連合や自動車総連など4つの民間産業別労働組合(民間産別)を政権寄りに誘導する計算」(官邸筋)もある。労組との交渉を担当する自民幹部も「国民民主と連立できなくても、産別の取り込みは可能だ。これが成功すれば、ほかの労組も補佐官送り込みを検討するはず」としたり顔で解説する。

確かに、自民党が労組の組織力を取り込めば「国政選挙での大きなプラス効果がある」(選対幹部)のは間違いなく、「それが岸田首相らの最大の目的」(同)ともみえる。しかも、パナソニックの活動は関西が中心で、日本維新の会の地盤と重なることから、自民幹部は「次期衆院選をにらみ、維新に抑え込まれている関西自民へのテコ入れには持ってこいの戦略」と胸を張る。

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