なぜ人々は「マツコ」にこうも惹きつけられるのか 「マツコ会議」終了に見るマツコ・デラックスの今後

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2009年に初の冠番組『マツコの部屋』(フジテレビ系)が深夜にスタートした。

『マツコ&有吉の怒り新党』(現・『マツコ&有吉 かりそめ天国』)は、2011年に放送開始した(画像:『マツコ&有吉 かりそめ天国』HPより)

その後立て続けに『マツコ&有吉の怒り新党』(現・『マツコ&有吉 かりそめ天国』。テレビ朝日系、2011年放送開始)、『マツコの知らない世界』(TBSテレビ系、2011年放送開始)、『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系、2012年放送開始)と各局で冠番組が始まった。

ご存じのように、これらは人気番組となり、いずれも10年以上続く長寿番組になっている。マツコ・デラックスに対する視聴者の支持がいかに根強いかを示すものだ。

テレビについて語る貴重な場だった『マツコ会議』

そこには、視聴者がマツコ・デラックスのテレビ愛の深さを自然と感じ取っている部分もあるだろう。目立つ体格やフォルム、舌鋒鋭いトークが主たる魅力であることは間違いないが、それに加えてマツコ・デラックスからは並々ならぬテレビ愛がにじみ出ている。

テレビ本来の楽しさを感覚的によくわかっているからこそ、その存在は画面のなかでいっそう輝くように思える。

テレビ本来の楽しさとは、マツコ自身の言葉を借りれば「バカなこと」をする楽しさだ。

戦後日本の経済的復興を象徴するものとして普及したテレビは、世の中の仕組みやルールにとらわれず「バカなこと」ができる自由な場でもあった。『8時だョ!全員集合』のザ・ドリフターズのコントなどは、その極みである。PTAなどからは低俗番組などとさんざん批判されもしたが、それ以上に子どもはもちろん、大人もその「バカなこと」を心ゆくまで楽しんだ。

だが時代は変わった。「コンプラ」という言葉の浸透が物語るように、テレビは「バカなこと」が遠慮なくできる場ではなくなりつつある。

そんな時代を見て、かつてマツコは「けっこう、もう弱者なんですよ、テレビは」と嘆きつつ、「でもどんな制約があっても、そのなかで面白いものを作らなきゃいけないんですよ」と語ってもいた(『5時に夢中!』2017年7月24日放送)。

そうしたなかで、『マツコ会議』はバラエティー色が比較的薄く、マツコの本音を聞ける数少ない貴重な場になっていた。そしてそこでは、現在のテレビに対する思いも随所で聞くことができた。

例えば、ブレークしてまだ間もない頃のフワちゃんが登場した回(2020年11月7日放送)にもそんな場面があった。

「フワちゃんはテレビでなにがしたかったの?」とマツコに聞かれ、フワちゃんが答えたのは「子どもが大勢出る番組のMC」。と言ってもNHK Eテレのような健全なものではなく、その番組で握りっ屁のような「ちょっと悪いこと」を教えたいとフワちゃんは言う。

その答えにマツコも、「すごく向いてる」と称賛するとともに、「子どもの欲求を満たしてあげる子ども番組って実はない」と現在のテレビを分析していた。

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