「生誕祭に客1人→卒業」アイドルの天国と地獄 いつもの"内輪ネタ"が「とんでもない事態」に…

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だが、見方を変えれば、この事実はファンだけが知っており、それだけでいいことなので弁明する必要性はなかったとも考えられる。

「本当にもっとバズりたければ、そのまま放置して、積極的にリツイートしたり宣伝すればよかったんです。けど、ファンの方にはしっかりお礼をしたかったので、(動画に関する説明の)ツイートをしました」

そのうえで、これ以上広がらないように、あえて触れないこととした。当然、その事実を公表したあとからは、心無い誹謗中傷が多くなった

アイドル卒業ライブは大勢のファンが駆け付け行われた(写真:うしおゆりなさん提供)

「悪意が感じられる写真や記事が(ネット上に)あがったり、ほとんど知らない人から急に連絡がきていろいろ言われたり、ほんと怖かったですね」

SNS社会ではバズり、有名になるのも一瞬だが、地に落とされるのも一瞬なのだ。

うしおは自らのツイートでバズり、自らのネタばらしで誹謗中傷を受けるということを、わずか2日間程度の間に経験したわけである。

この投稿に騙されたと思った人々も多くいたであろう。しかし、だからといって、うしおを非難して誹謗中傷するというのは違うのではないだろうか。

今、うしおはそういった誹謗中傷に心を痛めつつ戦っている。

垣間見た周囲の人たちの「良い部分」と「嫌な部分」

ただ悪いことばかりではない。学びもあった。

「今回の件で心配してくれる人、便乗する人、叩く人とかいろんな人の人間性が見えて、なんというか勉強になったしいい機会になったなと思います」

奇しくもバズったことによって見えた周りの人たちの人間性。見たくないものも見えてしまったが、これもいい勉強になったと話す。

「もう、私はお客さんひとりでも全力で歌いますよ。むしろそのほうがパフォーマンスがよかったりして、それはそれで課題ですし、自身の足りない部分だと思います」

知名度を上げるだけなら、今回のバズった効果をうまく利用したのだろう。

ただ、うしおはそれをしなかった。いや、できなかったと言っていいだろう。

自身の予想を超えた反響と垣間見えた周囲の人々の人間性。

勉強になったとはいえ、精神的なショックは受けている。だがこれを糧に今度はシンガーとして新たな一面を見せてくれるだろう。

「今回、あの動画に載せた『Re:start!!』って曲が良いと言ってくださった方も多くて、今度はシンガーとして大切に歌っていきたいと思います」

たったひとつのツイートに翻弄されたアイドル・うしおゆりな(設定36歳)。これからはアイドルを卒業し、シンガーとして文字通り「リスタート」を切ることになる。

次は「ワンマン大成功」といった嬉しいニュースでのバズりを期待したい。

*この記事の続き:「生誕祭に客1人」アイドル支える"ヲタク"の正体

松原 大輔 編集者・ライター

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まつばら・だいすけ / Daisuke Matsubara

富山県出身。編集者・ライター・YouTubeプロデューサー。中央大学法学部卒。在学中より故・永谷修氏に師事。大学卒業後、講談社生活文化局にて編集見習いとなる。その後、文藝春秋『Sports Graphic Number』編集部などで編集者・記者を経て、2018年に独立。書籍の企画、編集や執筆活動、YouTubeの動画制作・プロデュース、アーティストマネジメントなどを行っている。

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