「一流の営業」は地味な下積みをバカにしない 有力7社エースが明かす「顧客志向」の本質

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武政:河野さんは?

三井物産 渡邉大志さん

河野:部分的になら1年目からありましたが、本質的には最初の転勤のときですね。お客様に転勤のごあいさつをするときに「あなたと付き合えて本当によかった」と言われて、自分の成長を感じましたし、お客様に成長させていただいたんだなと思えました。

武政:河野さんの場合、お客さんは担当する営業に見込みがなければ会社にクレームを入れるなり、解約するなりできるでしょうからね。それがなかったということは、信頼されていたんでしょう。渡邉さんはどうでしょう?

三井物産 渡邉大志(以下、渡邉):三井物産の場合は、OJTで実務に携わりながら、先輩社員が指導してくれます。優秀な先輩の仕事のやり方やお客様との接し方を間近で見ると参考になりました。悩んだときに、先輩の仕事のやり方を振り返ってみて、やはり先輩もお客様のことを第一に考えていたので、早いうちからそれが正解だとわかりました。

武政:それは会社のDNAがよかったのか、その先輩がすばらしかったのかどちらですか。

渡邉:会社のDNAだと思いますね。

武政:人に教えられてそう簡単にできるものじゃないですよね。

渡邉:でも成果を出している先輩はみんな一貫してお客様目線でしたから。会社全体としてブレがなかったので、とてもやりやすかったです。

武政:ここにいる方でさえ、お客様目線が大切だと実感できるようになるまで時間がかかったわけですから、大切なことでも実践するのは難しいんでしょうね。

営業よ、自信を持て!

常見:今回、実は裏テーマがあって、もっと営業職が評価される、世間に認められるようにしたいと思ったんですね。学生や若い社会人を見ても、まだまだ営業のイメージは誤解されがちです。

武政:ドラマや漫画などで描かれている営業像は、どうもステレオタイプ的な物の見方ですもんね。

常見:私も営業になったばかりのころは昔の友人から「君みたいに人をだますような真似はできない」なんて言われましたからね。そう、大学の同期は、営業になった人が少なくて。営業はすばらしい仕事だと思いますが、もっと評価されていいと思いますし、営業自身が卑下しているところもあります。「僕は営業しかできないんですよ」とか「うちの会社の営業だから売れているんですよ」とか自虐的なところも悲しい。そこを今日みなさんとお話して、解消できたのはとても大きな収穫だと思います。

武政:常見さんは今、営業にどんなメッセージを送りたいですか。

常見:これはいろんな場所で言っているんですが、大事なことなので何度でも言います。これまでマーケティングや広報、人事、ライター、大学講師といろんな仕事を経験してきましたが、やっぱり私の原点は営業にあります。営業こそが企業を支えているんだ、日本を動かしているのはスーパーマンじゃなく営業マンなんだと今は自信を持って言えます。この記事を読んでいる営業の方にはぜひ自信を持って働いてほしいですね!

全3回、約1.8万字にわたりお届けした営業特集、いかがだったろうか。今回の企画を通じて、私自身、日本の営業が変わりつつあること、やはり世の中は現場で動いていることを再確認した次第だ。
この収録は、鳥肌モノであり、ぜいたくな体験だった。なんせ、大企業のデキるビジネスパーソンの議論をいちばんに聞くことができるのだから。この特集を読んで、営業について語る連鎖が広がっていくことを期待している。
最後に、本当に手前味噌だが、ご協力いただいた方、数名から「この企画を実現させた、あなたの営業力がすごいですよ」と言われた。うーん、恥ずかしいな。いや、私はやりたいことをやっただけだ。でも、新人の頃、いやいややっていた営業での経験が役立った瞬間だったと思う。
この企画に付き合っていただいた営業担当者、広報担当者に改めて感謝。この企画、第2弾、第3弾を構想中。売り込みも大歓迎。あなたの営業武勇伝を聞かせてほしい。
いやあ、営業って、本当にいいものですね!(水野晴郎風に読むこと)
 

 (撮影:尾形文繁)

常見 陽平 千葉商科大学 准教授、働き方評論家

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つねみ ようへい / Yohei Tsunemi

1974年生まれ。北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。同大学院社会学研究科修士課程修了(社会学修士)。リクルート入社。バンダイ、人材コンサルティング会社を経てフリーランス活動をした後、2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師に就任。2020年4月より現職。専攻は労働社会学。大学生の就職活動、労使関係、労働問題を中心に、執筆・講演など幅広く活動中。『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞社)『「就活」と日本社会』(NHK出版)『「意識高い系」という病』(ベストセラーズ)など著書多数。

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