円安や物価高でも格安「タイ鉄道の旅」の醍醐味 バンコクから日帰り、それぞれ特色ある4路線

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安全に対して厳しい日本では考えられない光景となるが、いっぽうで「やはり観光立国は違うな」とも感じる。精一杯の観光客への便宜を感じ、枕木と枕木の間に、歩きやすいようタイルが敷き詰められていた。

タイ国鉄としては、運賃たった10バーツ(約40円)の列車を走らせるために、押し寄せる観光客に対応しているわけで、国鉄だから成り立っていると感じた。とかく日本では人気列車が走ると「撮り鉄暴走」などという記事を目にする。しかし、メークローン線は人だかりであるが、何のストレスも感じずに観光できたのである。

メークローン駅 観光客の写真撮影
列車が到着すると自撮りの嵐となる(筆者撮影)

市場では、今まで地元客用に果物を売っていた店なら、食べやすいように皮を剝き、パックに入れれば観光客価格で売れる。土産店や「トレインカフェ」なる店などが多くなり、素朴な店は減少傾向だった。経済効果絶大に思えるが、線路から一歩遠い店にはあまり恩恵がないようにも感じる。

ウォンウェンヤイ駅から鉄道、船、鉄道と乗り継いで往復184円相当の旅であるが、日本人にはカルチャーショックを感じる旅となる。

美しい車窓の「泰緬鉄道」

古くから鉄道の旅が知られているのが泰緬鉄道ことナムトク線である。泰緬とはタイとミャンマーを意味し、旧日本軍が軍事物資輸送のために建設した(現在はミャンマーへは通じていない)。険しい地形の難工事だったためイギリス人捕虜などが過酷な労働を強いられ、「戦場にかける橋」として映画化もされた(この映画では日本人はどちらかというと悪者)。クエー川を渡り、クエー川沿いの木橋を行くシーンが有名で、映画の主題歌「クワイ河マーチ」とはクエー川のことだ。

ナムトク線 クエー川沿い 木橋
ナムトク線の車窓。クエー川沿いの木でできた橋をゆっくり通過する(筆者撮影)

この列車はトンブリ駅が起点。現在はメトロでアクセスでき、ブルーラインのバーンクンノン駅がタイ国鉄のジャラン・サニットウォン駅だ。この駅はトンブリ駅の次の駅なので、1駅戻れば始発のトンブリ駅となる。駅前には観光客を当て込んでお弁当がたくさん売られている。

ナムトク線 客車列車
ナムトク行きはアメリカ製ディーゼル電気機関車の引く客車列車(筆者撮影)
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