400超の有人島に「上陸」した彼の偏愛ストーリー 「現実逃避だった」島めぐりが仕事の潤滑油に

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「離島はエンジニア生活の厳しさを忘れさせてくれました。しかし、離島をまわって写真を撮るだけの生活だったら、それもまた厳しかったでしょう。

移動に時間はかかるし、いい写真を撮ろうと思ったら、何時間もかけて段取りを組まなければなりませんから。ときどき、なんでたかが趣味のために、こんなにつらい目にあってるんだろうって、我ながら悲しくなることもありましたし(笑)」

エンジニアの仕事と、離島の写真という趣味。一方が他方の潤滑油となって両輪を滑らかに回し、明日への活力となっていたのだ。

(写真:山岡成俊(ご本人より提供))

徹底したスケジュール・コスト管理で時間と費用を捻出

初めて離島を訪れて以来、山岡さんは忙しい日々の合間を縫うようにして離島を巡り、写真に収めている。

既に彼の興味は沖縄から全国の離島に広がり、現在訪れた島は、日本だけでも有人島400以上、無人島200以上にのぼる。

しかし話を戻せば当時1カ月200時間以上の激務をこなしていたエンジニアが、なぜ長距離移動を伴う離島巡りができるのだろう。

「時間がないってみなさんよく言いますが、不要な時間を切り詰めれば、時間は十分捻出できるんです。

島に行くために、飲み会やゴルフなど、同僚からの誘いも極力遠慮させてもらって、休みを全て旅行に充てました。それに移動手段を上手に組み合わせれば、意外と短時間で離島まで行けるものです」

例えば、仙台市にある松島に行くには、拠点としている大阪から金曜の夜に夜行バスに乗り、土曜の朝に到着。その日一日を撮影に充て、日曜日にLCCの飛行機で帰ってくれば、翌日月曜日から仕事に戻れる。

北海道や沖縄となればさすがに有給休暇を組み合わせなければならないが、それ以外の離島であれば、わざわざ休暇を取らなくてもだいたい行き来できるのだと、山岡さんは言う。

「『よく旅行費用が続くよね』って言われますけど、ちゃんとコスト管理もしています。夜行バスに乗れば宿泊費と交通費がいっぺんにカバーできますし、飛行機移動が必要な場所はLCCを使います。

宿泊費を抑えるために、旅館に泊まらずキャンプで済ませることもよくありますよ。とにかく私は他に趣味もないので、離島めぐりに全振りできます」

仕事を続けながら離島を巡って写真を撮るという活動には、スケジュール管理とコスト管理が欠かせない。

特にいい写真を撮るには、タイミングが命。潮の満ち引き、当日の天気、催される祭りの日程など、その瞬間、その場所でシャッターを押すためには、何日も前から逆算して計画を立てなければならないのだ。

その徹底したスケジュール管理、コスト管理の経験は、エンジニアの仕事にも役に立った。この日までにこの仕事を終わらせるために、いつ何をすべきか、逆算で段取りを組んで仕事を進める力が向上したという。

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