「ニート罰金法」、日本では憲法違反なのか 国が国民に「働くこと」を強制できないワケ

拡大
縮小

「働くことが尊いとわかっていても、すぐには働くことができない人はたくさんいます。健康上の理由だけでなく、人それぞれのいろいろな事情や経済・社会環境などの要因が、その背景にはあります。

また、就職して就労関係が成り立つのは、個人の努力によるところもありますが、それだけでは何ともならない『縁』のような部分もあります。刑罰を背景にして、働くことを強制するのは無理があるでしょう」

憲法で求められている「労働」とは

もし仮に、日本で「ニート罰金法」のような法律が定められたとしても、「『生命、自由及び幸福に対する国民の権利』を保障する憲法13条に違反する疑いが強い」と村上弁護士は指摘する。

「もちろん、憲法は、働かないことを推奨しているわけではなく、国民が健全な勤労生活を送ることを求めています。

ですが、それを実現する方法として、ニート罰金法のような無理なやり方ではなく、多くの人が個人の能力を高めて、それを活かせる『働きやすい社会環境』を整備するような方策が求められているのだと思います」

この法案を提案した、ベラルーシのルカシェンコ大統領は、1994年から20年以上も実権を握り続けていることから「欧州最後の独裁者」とも称される人物だ。そんな国だからこそ成立した法案と思いたいが……。

村上 英樹(むらかみ・ひでき)弁護士
主に民事事件、家事事件(相続、離婚など)、倒産事件を取り扱い、最近では、交通事故、労働災害、投資被害、医療過誤事件を取り扱うことが多い。法律問題そのものだけでなく、世の中で起こることそのほかの思いをブログで発信している。
事務所名:神戸シーサイド法律事務所
 
 
弁護士ドットコムの関連記事
「親の収入」に頼る「非正規社員」の若者…この現実から抜ける方法は?
痴漢に間違われたら「駅事務室には行くな」弁護士が教える「防御法」
家庭内で起きる児童への「性虐待」大人は「子のサイン」に気づけるか?
弁護士ドットコム
べんごしどっとこむ

法的な観点から、話題の出来事をわかりやすく解説する総合ニュースメディアです。本サイトはこちら。弁護士ドットコムニュースのフェイスブックページはこちら

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT