インフレ苦の欧州で岐路に立つ「気候変動」対策 各国で募る不満、「反グリーン」政党に支持

拡大
縮小

選挙結果は、国民党とボックスの2党では議会の過半数に届かなかった。投票率が上昇しており、極右の政権入りを恐れた有権者が積極的に投票所に足を運んだ可能性がある。

今後のシナリオとしては、①国民党とボックスが非多数派政権を樹立するか、②分離独立派の地域政党などの協力を得て、社会労働党が政権を発足するか、③右派・左派ともに政権発足に必要な議会の信任が得られず、年後半に再選挙が行われる展開が考えられる。今のところ、①と②は難しいとみられ、③の可能性が高い。

初の政権入りを目指すボックスは今回の選挙戦で、社会労働党政権が推進してきた人工中絶やトランスジェンダーの権利拡大、積極的な気候変動対策、カタルーニャの分離独立派との対話路線などに異を唱えてきた。

気候変動関連では、交通渋滞の激化を招いたとして、人口5万人以上の市町村に自動車の乗り入れを制限する「低ガス排出エリア」の設置を義務付ける法律や自転車専用レーンの増設に反対している。

すでに国民党とボックスが連立している市町村では、低ガス排出エリアや自転車専用レーンの縮小が検討されている。国政レベルでの政権入りのハードルは高いが、こうした主張が有権者から一定の支持を集めたことがうかがえる。

農民政党が支持を伸ばすオランダ

移民制限を巡る対立で7月初めに連立政権が崩壊したオランダでは、2019年に誕生した右派ポピュリスト政党・農民市民運動(BBB)が急速に支持を伸ばしている。

オランダの主な政党支持率

BBBは2021年の下院(第二院)選挙ではわずか1議席の獲得にとどまったが、2023年の州議会選挙で最多票を獲得し、州議会の投票で選ばれる上院(第一院)でも最大勢力となっている。11月に総選挙を控えるなか、最近の世論調査でも、中道右派の現与党・自由民主国民党(VVD)、労働党(PvdA)と緑の党(GL)が連携する中道左派会派とともに、主流派政党の仲間入りを果たしている。

多くの政党が議会で議席を分け合うオランダでは、政権発足には多党連立が欠かせない。中道右派のVVDが政権を発足するには、BBBの協力が必要となる可能性があり、同党の政策主張が次期政権の政策運営に反映される可能性がある。

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