民間初の宇宙ごみ除去装置生み出した発想の転換 タブーに挑み切り開く!アストロスケール・伊藤美樹

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車には、故障時にレッカーで引けるようにフックが付いていますよね。私たちはそれに似た「お助けアイテム」を開発し、これから打ち上げる人工衛星に予め装着することで、運用停止後に回収しやすくするサービスを始めました。

既存のスペースデブリ除去の実現につながる技術のロードマップ作成につながりましたし、2021年に開始したミッションにおいて、スペースデブリの除去に必要な主要技術の実証ができました。

宇宙事業以外の分野の技術で中間ステップをクリア

──いきなり難易度の高い事業に挑戦するのではなく、中間ステップを設けたことによって、目標を達成しやすくしたのですね。

そうですね。ただ難易度を下げたと言っても、中間ステップをクリアするのも決して容易ではありませんでした。

先ほど申し上げた「お助けアイテム」とは、磁石でくっつくドッキングプレートなのですが、本来人工衛星に磁石は乗せられない決まりになっています。宇宙空間で方角を把握するために搭載されている地磁気センサーが、影響を受けてしまうからです。

そのタブーを知ったうえで磁石を使うのですから、人工衛星に影響が出ないようにする必要がありました。このとき役立ったのが、宇宙事業以外の分野で使用されていた地上の技術です。

おそらく宇宙の分野で長く活躍してこられた方であればあるほど、磁石を使うというアイデアは想像しえないものだったと思います。

しかし私たちは、地上で使われていた磁場をコントロールする素材を活用し、人工衛星に積んでも問題のないドッキングプレートを開発しました。

すでに契約もいただいており、私たちの作ったドッキングプレートを搭載した人工衛星が打ち上げられています。

──宇宙業界以外の技術にも目を向けることには、普段からこだわっているのですか?

そうですね。組織の話になりますが、私たちは創業期から他業界出身の技術者を積極的に採用してきました。

人工衛星とは総合技術の塊なので、電気や機械、通信、ソフトウェアなど、多様なフィールドの技術者がそれぞれの専門分野で培った技術を生かすことができます。

一方、宇宙産業で使われている技術やプロセスは非常にレガシーなので、他業界の出身者には、宇宙業界の慣習にとらわれずに開発に取り組んでほしいと思っています。

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