民間初の宇宙ごみ除去装置生み出した発想の転換 タブーに挑み切り開く!アストロスケール・伊藤美樹

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宇宙開発の中でも極めてニッチなスペースデブリ除去という領域に着目し、難易度の高い事業で成長し続けられているのはなぜなのか。伊藤さんに話を聞いた。

宇宙開発が停滞すれば、日常生活が変わってしまう

──近年、宇宙開発事業に参入する民間企業は増えていますが、手がけているのはロケット開発などが一般的ですよね。そんな中で、アストロスケールがスペースデブリ除去というビジネスモデルに着目した背景を教えてください。

スペースデブリが増え続けていく状況に課題を感じたからです。宇宙開発というと遠い世界の話に感じる方が多いかもしれませんが、実は私たちの生活と密接に関係しているんですよ。

アストロスケール 上級副社長
伊藤美樹さん

天気予報を見たり、GPSを使って目的地に行ったり、災害時に被害の発生場所をいち早く把握したりできるのは、人工衛星があるからです。

私たちの生活インフラの多くは、人工衛星から送られてくる地球の画像データを分析することによって成り立っています。

ところが、使い終えた人工衛星やロケットの破片などからなるスペースデブリは、これまで宇宙空間に放置され続けてきました。大きいものだけで約3万6000個、微細な物体も含めると何億ものスペースデブリが宇宙空間に散在しているのが現状です。

このままでは、宇宙はごみだらけになってしまいます。さらに状態が悪化すれば、今稼働している人工衛星の継続的な運用ができなくなってしまうばかりか、宇宙空間に新しい人工衛星やロケットを打ち上げられなくなってしまうでしょう。

──宇宙環境が想像以上に深刻な状況であることに驚きました。

さらに、近年は民間企業の進出に伴って宇宙開発は加速しています。

例えばSpaceXは、地球全土を覆う人工衛星網を作り、あらゆる場所でインターネットの利用を可能にするビジネスを構想しています。これを実現するためには、何千機という新たな人工衛星の打ち上げが必要です。

今までは6000機程度だった人工衛星の数が爆発的に増加すれば、それだけ衝突の可能性が高まるのは言うまでもありません。

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