京セラ、ソーラー事業にぬぐいきれぬ不安 最大の足かせはソーラーの価格下落

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一番の悩みの種はソーラー事業だ。大幅減益の要因は慢性的な価格下落にある。京セラのソーラー事業は6~7割がメガソーラーなどの産業用。この市場では、インリー・グリーンエナジーをはじめとした中国勢による価格競争が続き、利益を享受できているプレーヤーがほとんどいない状況になっている。京セラはその煽りをモロに受け、2014年度第4四半期のソーラーパネル販売価格は、前年同期比で18%も下落した。

さらに、京セラのソーラー事業の9割は国内向けだが、需要が頭打ちで、大きな成長は望みにくくなっている。「電力買い取り価格も下がっているし、日本には場所に限界もあるので厳しい。たくさん作って、たくさん利益を生み出すという考え方は当てはまらなくなっている」(山口社長)

こうした状況下で、京セラの2015年度営業利益予想は前期比71%増の1600億円。なかでもソーラーを含むファインセラミック応用品関連事業は、500%増の190億円になる想定だ。2014年度にあった数十億円の減損費用がなくなるとはいえ、それでも100億円前後の増益を達成する必要がある。

今年度の国内ソーラーパネル価格について、山口社長は「5%程度の下落を見込んでいる」と、下落幅が緩和されるとの見方を示した。だが、状況は依然不透明だ。再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)での買い取り価格は、2012年の開始以降、毎年引き下げられており、今後も下落は必至。収入が減る発電事業者はよりコストに敏感になり、ソーラーパネルの価格競争はますます激しくなることが予想される。

経営陣が描く打開策とは?

当然、京セラ側も産業用の厳しさを認識しており、現在は住宅用への拡販を急いでいる。さらに、ソーラーパネルの単品売りではなく、蓄電池などを合わせた“発電システム”という形で販売することで付加価値を出そうとしている。「今後、発電したエネルギーを売電しないで自己消費するという使い方が広がってくる。そのためにはいいバッテリーが必要。システムで販売することで利益を出していく」(山口社長)。とはいえ、この分野は開拓途上。短期的に大きな利益寄与は見込みづらい。

会社側は採算改善策として、コストの低減も挙げる。「京セラはソーラー素子の元となるシリコンの部品から自社で作っている。そのため(歩留まりなど)原価改善の伸び代が大きい」(同社広報)。シリコン価格が現在、下落傾向にあるのも追い風となる。

京セラは1975年から太陽電池の開発を続け、今でもすべて国内で生産を行う数少ない企業の一つ。数量、価格とも苦戦という逆風が吹きつけるなか、旗手であり続けることができるだろうか。

渡辺 拓未 東洋経済 記者

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わたなべ たくみ / Takumi Watanabe

1991年生まれ、2010年京都大学経済学部入学。2014年に東洋経済新報社へ入社。2016年4月から証券部で投資雑誌『四季報プロ500』の編集に。精密機械・電子部品担当を経て、現在はゲーム業界を担当。

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