日本の「半導体検査装置」に訪れる生成AIブーム 生成AIで必須のGPUを支えるアドバンテスト

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転機となったのが、2011年の同業・ヴェリジーの買収だ。アドバンテストのテスタは、それまで市況変動の影響を受けやすいメモリ向けが中心だった。それが、ヴェリジーを取り込むことでCPUに使われるロジックなど非メモリ分野での橋頭堡を築いたのだ。

以降、市況変動の影響を受けつつも5G通信やデータセンター投資の拡大、スマホの高性能化などを追い風に、非メモリ向けが牽引する形で業績は順調に拡大。コロナ禍以降は成長に拍車がかかっている。

巨大テック企業とのプロジェクトも

「顧客とは具体的なプロジェクトがいくつか走っている。『来るかもしれない』ということではなく、実際にデバイス(半導体)が設計・試作されている。それが量産になるタイミングがいつか、ということ」

今年4月に開かれた2023年3月期の決算説明会。「生成AIに関して2024年以降に向けて実際の引き合いが見えてきているのか」と質問したアナリストに、吉田芳明社長はそのように回答した。

説明会での吉田社長の発言を受けて、株式市場は「GAFAM向けのプロジェクトも動いているのだと理解した」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の和田木哲哉シニアアナリスト)。事実、グーグルやマイクロソフト、メタといった企業はAI用半導体の自社開発に乗り出している。

GPU検査装置の市場を独占し「幅広い顧客と付き合いがある」とするアドバンテスト。将来的にエヌビディアの競合相手になり得るプレーヤーにも食い込めていることは大きい。

生成AIのゴールドラッシュが続くほどに、アドバンテストへの注目度は高まっていきそうだ。

石阪 友貴 東洋経済 記者

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いしざか ともき / Tomoki Ishizaka

早稲田大学政治経済学部卒。2017年に東洋経済新報社入社。食品・飲料業界を担当しジャパニーズウイスキー、加熱式たばこなどを取材。2019年から製薬業界をカバーし「コロナ医療」「製薬大リストラ」「医療テックベンチャー」などの特集を担当。現在は半導体業界を取材中。バイクとボートレース 、深夜ラジオが好き。

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