小野寺五典氏「日本のサイバー空間だけ無法地帯」 今後の防衛・安全保障はチーム抑止力が中心に

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塩田:通常国会末期の6月16日に国会で防衛力強化の財源確保に関する特別措置法案が成立しました。防衛予算の財源問題をめぐるこれからの見通しは。

小野寺:今年の予算は決定していますので、今後の財源の捻出については今年の暮れに決まっていくと思っています。心配しなければいけないのは、予算が増えることで無駄遣いしないかどうかです。

私たちは予算を増やすのですが、「金額ありき」で、予算の数字があるわけではありません。安全保障に資する必要な予算を積み上げていって、結果として、日本としては2%の基準で努力していることを示す。それが必要だと思います。必要なものが増額になり、手当てできているかどうか、厳しく見ていく責任があります。

防衛費増額は日本の技術開発にもプラス

塩田:防衛予算の財源に関して、消費税の増税の可能性はありますか。

小野寺:岸田総理は否定しています。そこにつながることはないと思います。私個人は、個人所得税である東日本大震災の復興特別税の一定期限の延長によって新たな財源とする形は反対ではありません。今の予算の積み上げの議論の中で、復興特別税を将来的に防衛予算に切り換えたとしても、現在の個人所得税が増えるわけではありません。

もう一つは法人税の上乗せです。対象の企業は全体の7%ぐらいと聞いています。今回の防衛予算増額のかなりの部分は研究開発費やインフラ整備費用で、これらは経済活性化や日本の将来の技術開発につながります。長い目で見れば、企業のプラスになる部分もある。そういう意味合いだと説明していきたいと思います。

塩田:一方で、岸田首相は政権獲得となった2021年9月の自民党総裁選のときから、「在任中に憲法改正を」と言い続けていて、その旗を今も下ろしていません。

小野寺:憲法改正は大きな課題です。抑止力を高め、平和な日本にするための防衛力整備や、今後の日本にとって大きなテーマである少子化対策などを打った上で、次は憲法改正を目指す。私は岸田総理にぜひやっていただきたいと思っています。

以前に比べると、改正に理解がある政党が増えています。しかし、各党の考え方が違うので、改正に賛同でも、中身について足並みがそろっていません。私は足並みをそろえていく努力が大事だと思います。最後は国民投票ですから、議論の過程で国民の皆さんに憲法問題の中身を理解していただく。岸田総理はおそらくそのスケジュール感をもって動いていると思います。

塩田 潮 ノンフィクション作家、ジャーナリスト

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しおた うしお / Ushio Shiota

1946年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
第1作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師―代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤』『岸信介』『金融崩壊―昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『安倍晋三の力量』『危機の政権』『新版 民主党の研究』『憲法政戦』『権力の握り方』『復活!自民党の謎』『東京は燃えたか―東京オリンピックと黄金の1960年代』『内閣総理大臣の日本経済』など多数。

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