小野寺五典氏「日本のサイバー空間だけ無法地帯」 今後の防衛・安全保障はチーム抑止力が中心に

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塩田:防衛産業の在り方や、兵器の開発・生産、装備の海外移転などについても、現在、相当の制約がありますが、これらの点はこれからどうすべきですか。

小野寺:1950~1953年の朝鮮戦争のとき、日本の最大の輸出産業は武器でした。日本の企業が砲弾や銃などを造って供給をしていました。ですから、戦後一貫して防衛装備移転の制限や、武器輸出3原則を持っていたわけではないんです。

ところが、朝鮮戦争が終わり、需要が減ってきて日本国内での生産が落ちていったとき、国会で保革対決が激しくなり、野党側が常に攻撃してきたのがこの問題でした。そのたびに、日本の首相が自らの発言で自分たちの首を絞めていき、3原則を作った。もともとは共産圏に輸出してはいけないというルールだったのに、いつの間にかみんな出してはいけないことになった。

その結果、日本の防衛産業は日本の自衛隊向きのものしか造りませんので、どんどん小さくなっていった。商売にならなくなり、撤退が相次いだ。技術も劣化しているので、このままで行くと、日本国内では防衛装備は造れない状況になりました。それで、安倍内閣になって、すぐに装備移転3原則を作りました。私は防衛大臣で、経緯もよく知っていますが、今でも非常に抑制的な状況になっています。

国際的な融通システムは不可欠

国際社会では、今回のウクライナ侵略で、一国が本格的な戦争を始めたとき、武器・弾薬が世界中で枯渇することがわかった。今、NATO諸国やアメリカはフル稼働で生産していますが、すぐに消耗して足りなくなる。これからは仲間の国同士で弾や武器を融通し合うという国際的な融通システムがあって初めて継戦能力が出てくるわけです。

もし日本周辺で問題が起きたとき、日本も応援してもらうことになるのですが、日本の場合は、輸出だけではなく、輸入に関しても、貿易管理令があり、全部、経済産業省と税関の審査がある。日本が攻撃を受けていろいろな国からの応援でワーッと弾が来たとき、審査なんかやっていたら負けてしまう。装備移転は、出すだけではなく、来ることに関しても全く現実に合っていない。それを有事に合わせて見直すことが大事です。

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