帯状疱疹ワクチン「すぐ打つべき人」そうでない人 世田谷区、中央区、品川区、板橋区も補助対象に

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がんと診断されたら、最終的に治療方針が決まり、治療が開始されるまで1カ月以上かかるため、その間に感染症予防のワクチンを済ませておくことが望ましい。

6月から18歳以上でも接種可能に

帯状疱疹を予防するワクチンには、2種類ある。1つは、子どもの水ぼうそう予防にも使われている、弱毒生ワクチンだ。生ワクチンの場合、生きたウイルスが入っているため、免疫の低下した人に接種すると、感染症を引き起こすことがある。そのため、抗がん剤治療を予定している患者さんには使いにくい。

一方、今広く用いられている帯状疱疹ワクチン「シングリックス」は、不活化ワクチンであり、生きたウイルスは入っていない。ウイルスの表面に付いているタンパク質が含まれており、それに対して免疫を獲得することで、ウイルスの増殖を抑制することができる。不活化ワクチンなので、免疫の低下している方に接種しても、感染症になることはない。

さまざまながんを対象に、シングリックスの効果が検証されている。血液がんの人を対象にした研究では87.2%、自家造血幹細胞移植治療を受けている人を対象にした研究では68.2%、と報告されている。固形がん(血液がん以外のがん)での効果を示したデータは見つからないが、今後さまざまな研究により明らかになると予想される。

2023年6月からシングリックスの適応が拡大され、18歳以上で、化学療法や造血幹細胞移植治療により免疫が低下し、帯状疱疹の発症リスクが高いと考えられる人も接種してよいことになった。この場合は1〜2カ月間隔での2回接種と、手術前や化学療法開始前の1カ月で接種が終わるように配慮がなされている。もちろん、これまで通り50歳以上の方は、2カ月間隔での2回接種となる。

東京都は今年度から自治体への帯状疱疹ワクチン補助事業を始めた。文京区や中野区など14区に加え、7月1日から世田谷区、中央区、品川区、板橋区も対象となった。8月には足立区、9月には江戸川区、10月には葛飾区も対象となる予定だ。50歳以上なら接種費の補助が受けられるので、各自治体の開始時期や金額について東京都保健医療局のサイトで確認してほしい。

50歳といえば、がん年齢でもある。病原体だけでなく、がん細胞に対する免疫も低下し始めるのが原因のひとつだ。シングリックスでの帯状疱疹予防に加え、人間ドックやがん検診をしっかり受け、がんの早期発見にも留意したい。

久住 英二 内科医・血液専門医

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くすみ えいじ / Eiji Kusumi

1999年新潟大学医学部卒業。内科医、とくに血液内科と旅行医学が専門。虎の門病院で初期研修ののち、白血病など血液のがんを治療する専門医を取得。血液の病気をはじめ、感染症やワクチン、海外での病気にも詳しい。

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