ファナック、決算説明会で出た社長の"本音" 富士山麓の本社で4年ぶりに開催

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今回、注目を集めたのは、決算と併せて発表した株主還元の大幅な拡充だ。今後5年の間、配当性向をこれまでの倍の60%、加えて当期純利益の平均20%の範囲内で自社株買いを実施する。稲葉社長は説明会で、「手元資金が1兆円近くまで貯まってきたので、これ以上積み増しを行わず、株主への還元に大きく舵を切る。(利益の最大8割を還元に回しても)最低2割の資金が手元に残る。2016年3月期でいうと400億円弱。これは将来の投資にとって十分な額だと考えている」と説明した。

 「業績が好調だと社長も饒舌ですね」。決算説明会の終了後、ある外資系証券アナリストは皮肉交じりにこう話していた。本社での説明会は2011年1月以来だが、過去最高益を記録した2012年3月期、稲葉社長は東京証券取引所で決算説明を行っている。ところが、2013年3月期、2014年3月期と連続減益となった時は姿を見せなくなっていた。

空前の好業績で着地

スマホ特需の追い風もありファナックの業績は過去最高を更新した(撮影:尾形文繁)

だが今回、2015年3月期は空前の好業績で着地した。売上高は前期比約6割増の7297億円、営業利益は同8割増の2978億円と、いずれも過去最高を更新した。

業績を牽引した最大の要因は「スマホ特需」だ。中でもこの恩恵を受けたのが、小型工作機械「ロボドリル」を手掛けるロボマシン部門。ロボドリルは米アップルの「iPhone」などのスマートフォン用アルミ製筐体(ケース)の切削加工に使われる。近年は、韓国のサムスン電子や中国の小米科技(シャオミ)などのスマホメーカーもアルミ製筐体を採用し、需要が大きく拡大した。

 好調な受注を受け、2016年3月期の上期も売上高、営業利益ともに2ケタ増を見込む。だが、通期の業績見通しは減収減益だ。上期好調、下期減速とした理由について、稲葉社長は「残念ながら、この上期で特需は一旦落ち着く。次はいつ始まるのかわからない。とはいえ下期の売上高予想を倍にしても、過去と比較すれば当社にとっては大きい数値だ」と説明。特需を除いても収益は高水準であることを強調した。

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