霞が関人事に激震!財務省が「次官総なめ」の深層 復興、人事院、公取委トップまでポスト大量獲得

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1988年入省組でトップを走ってきたのは、今夏の人事で国税庁長官を退く阪田渉氏だった。また、阪田氏の後任となる住沢整主税局長も同期ではエース格だった。しかし、国税庁長官は原則として、引退前の「上がりポスト」とされる。

一方、国税庁長官は「次官級」ポストだ。中央官庁には、次官という名前は付かないが、次官と同等の位置づけである次官級ポストがある。財務省では自前の次官級ポストとして、国税庁長官や財務官を持つ。そのほか、人事院事務総長や公正取引委員会事務総長といった次官級ポストがあり、財務省は各省間での交渉や争奪戦で獲得している。

1988年組は次官級の国税庁長官を2人輩出したが、本物の「次官」を出せないことになる。そこで、2年前から財務省上層部が人事権者である官邸に復興次官のポストをもらえるよう働きかけていたようだ。

順番通りならば今夏復興次官のポストを取るはずだった旧自治系幹部とは水面下でバトルを繰り広げたが、軍配は財務省に上がった。昨夏以来、官邸上層部と旧自治省にすきま風が吹いており、角田復興次官誕生の背景にもなっている。

今後は内閣、環境次官も

財務省から分離・独立はしたが、金融庁長官も財務省出身の栗田照久氏(大蔵省1987年入省)が就く。金融庁には金融国際審議官という次官級ポストもあり、有泉秀氏(同1988年)が就く。また公正取引委員会の事務総長も次官級で、藤本哲也経済取引局長(同1987年)が内部昇格する。

これまでに書いただけで、財務省出身者が財務次官、復興次官、国税庁長官、財務官、金融庁長官、金融国際審議官、公取委事務総長と7つの次官・次官級ポストを握ることになる。

実はこれに先立つ2022年12月、財務省はすでに次官級ポストを1つ獲得していた。柴崎澄哉氏(同1986年)が就任した、人事院の事務総長だ。同ポストは、給与体系上、財務次官と同格。この時から「財務省は来夏の人事で各省の次官や次官級を総なめにするのでは」との観測が立っていた。

今夏は次官交代が見送りとなったが、今後、内閣府では井上裕之内閣審議官(同1986年)、 環境省では鑓水洋総合環境政策統括官(同1987年)が事務次官に昇格する可能性がある。いずれも、次官含みで内閣府や環境省に2~6年前から持ち駒を送った財務省上層部の作戦が光る。

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