コスモ、株主総会で村上ファンド系に薄氷の勝利 大株主を排除しても買収防衛策の賛成率は59%

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6月22日開催のコスモの株主総会。採決からシティ側を除外したにもかかわらず、買収防衛策発動に対する賛成率は59.54%と僅差だった(撮影:尾形文繁)

「残念ですね」。6月22日に東京都内のホテルで開かれたコスモエネルギーホールディングスの株主総会で、社外取締役1人の選任を提案したシティインデックスイレブンスの福島啓修代表は一言そう言い残し、会場を後にした。

シティは、アクティビスト(物言う株主)の村上世彰氏が影響力を持つ旧村上ファンド系の投資会社で、村上氏の長女・絢氏などと共同でコスモ株の20%超を握る。2022年3月からコスモ株を市場で買い進めながら、再生可能エネルギー事業の分離独立の検討などを会社側に求めてきた。

一方、コスモ側は「再エネ事業の分離独立は企業価値を毀損する」などしてシティの提案に反対。さらにシティらが最大約40%までコスモ株を買い増すおそれがあるとして、一定の条件のもとでシティを除いて新株予約権を無償で割り当てる買収防衛策を打ち出し、その発動の是非を株主総会に諮った。

結果は会社側の勝利。会社側が提案した役員選任議案や買収防衛策発動議案は可決され、シティ側が提案した社外取締役選任議案は否決された。

「実質的に否決だった」

今回の株主総会が大きな注目を集めたのは、劇場型の対立を繰り広げただけが理由ではない。買収防衛策発動議案の採決に当たって、シティなど大株主の議決権を排除し一般株主だけの意向を問う「MOM(マジョリティー・オブ・マイノリティー)」決議を採用したからだ。

株主平等の原則を脅かしかねない「伝家の宝刀」(証券市場関係者)とも言われる採決方式で、2021年に東京機械製作所が買収防衛策の決議で導入し、その是非が最高裁判所まで争われ認められた経緯がある。経済産業省のM&A(合併・買収)に関する新指針案では、MOM決議は「例外的かつ限定的な場合に限られる」とする。

6月23日に公表された臨時報告書によれば、買収防衛策発動議案への賛成率は59.54%。だが、仮にMOM決議から除かれたシティ側の議決権を反対票に、コスモ側の役員持ち株会などの議決権を賛成票に加えると、賛成比率は約45.89%にとどまり、買収防衛策発動議案は否決されていたことになる(シティの推計)。シティは「買収防衛策の決議は実質的に否決だったと評価すべき」とする。

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