次の標的はツルハHD、ドラッグ再編迫るオアシス ファンドの狙いはガバナンス強化と業績改善

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ドラッグ業界へのファンドの関心は高まってきている。例えばオービス・インベストメンツは、保有する日本株の10%以上をドラッグストア銘柄が占めている。

オービスの時国司・日本法人社長は「合併・統合による恩恵や、調剤薬局やスーパーマーケットからシェアを奪えるなど成長余地があるにもかかわらず、割安に放置されてきたセクター」と指摘する。

そのうえで「足元では光熱費の高騰等による利益率圧迫が懸念され、ドラッグストア銘柄全般が落ち込んだ。だが実際には価格転嫁やコスト管理に成功している銘柄もあり、割安感が強いとみてポジションを積み増した」と語る。

ドラッグ業界の中で、なぜオアシスはツルハHDの株を買ったのか。ツルハHDは創業家の持ち株比率が1割未満と少なく、ウエルシアのような親会社がいない。時価総額は5307億円(6月16日時点)で、売上高で業界2位を争うマツキヨココカラの1兆1760億円と比べて半分以下の水準だ。

業績も芳しくない。同社の2022年5月期の営業利益は、前年同期比で16.1%減の405億円に沈んだ。コロナ特需剥落が響いたことに加え、出店競争激化で既存店売上高が苦戦している。2022年5月期は159店舗の積極出店の一方、不採算店など退店57となった。

足元はマツキヨココカラとの2位争いに加え、業界4位のコスモス薬品が破竹の勢いで追い上げている。コスモス薬品は食品強化型の大型安売り店を軸に、M&Aなど行わず自力出店のみで地盤の九州から北上してきている。郊外型店の多いツルハHDも、価格競争に一段と巻き込まれることになりそうだ。

「攻めから守り」へ戦略転換

これまでM&Aで規模拡大を続けてきたツルハHDだが、戦略に変化が出てきている。2025年5月期にかけての最優先課題は「収益力改善」。出店数を抑制して赤字店舗の増加を食い止める方針で、攻めから守りの方針に転じている。

2023年5月期からは、配当性向を50~70%へ大きく引き上げる方針を打ち出している。2022年5月期の配当性向38%も同業他社と比べると高水準だったが、さらに株主還元を積極化する方針だ。背景には株価上昇への期待に加えて「配当性向を引き上げれば、多くのファンドは口出ししてこなくなると考えたのでは」(ドラッグ業界関係者)とも言われる。

オアシスの乱入で業界再編の波が押し寄せるドラッグ業界。イオンやファンド株主はどう動くのか、8月開催予定の株主総会は波乱含みだ。

伊藤 退助 東洋経済 記者

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いとう たいすけ / Taisuke Ito

日用品業界を担当し、ドラッグストアを真剣な面持ちで歩き回っている。大学時代にはドイツのケルン大学に留学、ドイツ関係のアルバイトも。趣味は水泳と音楽鑑賞。

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