「器の小さい人」怒らせてみるとわかるという真実 なぜ"アホ"は怒り、成功者は感謝するのか?

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権力闘争に敗れたら死しかない、古代中国の歴史から学べることは多い。とくに、三国志で最強の軍師といわれる諸葛孔明の人物鑑定法はシンプルだが今でも活きる。

『これを窮(きゅう)せしむるに辞弁を以(もっ)てして、その変を観る。』

限界まで追い詰めてそこでの態度を見る、と私は解釈している。簡単にいえば、「怒らせる」のだ。本性が出るのは感情を乱したときだ。怒って感情を乱すにいたる経路や時間にも多くのヒントが隠されている。

・どこまでが平静を保てる限界か?
・何に怒るのか?
・仮に怒っても怒りをコントロールできるか?

何事も要は〝調子よくないときがほとんど〞でそこでどう対処できるかが人生の要諦。調子が悪いときに「その人はどう対応するか」が見ものなのだ。

孔子による「大人物」の定義

『君子は憂へず懼(おそ)れず。』

これは孔子による「大人物」の定義である。諸子百家の中でも、能力のわりに不遇で終わった孔子のすばらしさは、群を抜いた〝定義の小気味良さ〞だ。

大人物とは、「窮地にあってもまったく動じない人物のこと」である。春秋戦国時代のさなかに、多くの栄枯盛衰・盛者必衰を目の当たりにしながら、不遇の自分の人生を自省して行きついた境地なのだろう。

今を時めく大谷翔平選手も「イラッとしたら負けですから」とつねに言い聞かせているという。〝不動の心〞を持っているのだろう。日本のプロ野球時代、西武ライオンズのコーチなどを務めたデーブ大久保さんによると、「ヤジると一瞬鋭い視線でにらみ返してきた。しかしそのあとが彼は違った。われわれをにらみつけた後、静かに打席に向かい、ものすごい打球を放ってわれわれを黙らせたことがあった」と言う。怒りの感情は持ちながら、それをコントロールしてエネルギーに変えてプレーに活用したのだ。

不遇のときに、逆境時に、人間は鍛えられる。もちろんそこでひねくれてしまう人もいるが。冬の時代の過ごし方がとても大事だ。

ただし、怒らせてしまった後のフォローも大事だ。人物を「鑑定」することが、最終的な目標ではない。「鑑定」した結果を元にして、付き合うべき人物なのか、また、付き合うとするならばどのような距離感がよいかを知ることが目的だ。今後も程よい距離感をもって関係を続けたいのならば、怒らせた後のフォローが必要になる。

まずは不快にさせたことを謝罪しよう。前作『頭に来てもアホとは戦うな!』でも記したように、「メンツよりも実利」の精神だ。こちらからけんかをふっかけておいて謝るのを恥ずかしいと思わず、まずは頭を下げて相手に溜飲を下げさせる。

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