支持率急落、岸田首相「解散ニヤリ顔」に広がる不信 「解散権をもてあそんでいる」と高まる批判

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一方で、公明党が公認調整で抵抗した本音には「早期解散阻止」の狙いもあった。公明党・創価学会は4月の統一地方選で選挙運動を全国で展開。巨大組織の創価学会の態勢を衆院選モードに切り替えるには時間がかかるため、6~7月の解散・総選挙は好ましくないのだ。

安倍晋三政権では、当時の菅義偉官房長官が創価学会の佐藤浩副会長らと連携。解散の時期などについても創価学会側の意向を尊重してきた。岸田政権では松野博一官房長官や茂木敏充自民党幹事長が創価学会とのパイプ役を担うことはなく、解散時期をめぐる意思疎通も進んでいないという。

マイナンバーをめぐる混乱も加わった。健康保険証との統合や金融機関の口座のひもづけで、他人の保険証や口座につながるなどのトラブルが相次ぎ、利用者の不安が広がった。政府は今秋までに総点検を進めることを約束せざるをえない事態となった。

広島サミットの勢いで早期解散の可能性を探っていた岸田首相も、6月初旬には解散見送りに傾いていた。

「解散近し」次々と伝えられた自民党議員の発言

だが、多くの自民党衆院議員の心理は違った。

野党の立憲民主党は支持率も低迷し、候補擁立も遅れている。日本維新の会は統一地方選では勢力を増やしたものの、衆院の準備はほとんどできていない。「今がチャンス」「解散近し」といった自民党議員の発言が次々とテレビなどで伝えられた。

メディアは解散をめぐる政治家の発言を垂れ流した。本来、衆院の解散は、憲法によって内閣不信任案が可決された場合、内閣は総辞職か解散を選択することが規定されていて、そこで解散を選ぶ場合に行われる。

憲法の「天皇の国事行為」としての衆院解散を行う場合は、与野党が政策をめぐって決定的に対立した場合や政権が重要な政策変更を行う場合に限定されている。首相が「勝てそうだから」という理由で恣意的に解散できるというわけではない。そうした解散をめぐる原則論は考慮されず、「解散はいつか」というニュースばかりが流された。

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