リクナビ「サクラ行為」の謝罪が不誠実すぎる理由 問題をうまく矮小化し、「動物園」表現には触れず

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「悪い意味でうまい」リクルートの謝罪。「問題矮小化」とも言えるテクニックを、企業PR戦略の専門家・下矢一良氏が解き明かしていきます(画像:リクナビ公式Webサイト)
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リクルートは今月、学生向けのオンラインセミナーで、いわゆる「サクラ行為」があったとして謝罪した。

私はかつては記者として、現在はPR戦略コンサルタントとして、多くの企業の「謝罪」を見てきた。今回のリクルートの謝罪文を見て、「さすがうまいな」と感じた。ただし悪い意味で、である。

どこが「悪い意味でうまい」のか。本稿では「問題矮小化」とも言えるテクニックを解き明かしていきたい。

学生の集まりを「動物園」と揶揄

まず今回の不祥事を振り返ってみたい。発端となったのは6月3日に、ツイッターのフォロワー数が196万を誇る、暴露系インフルエンサーの滝沢ガレソ氏が、リクルート社内のものと見られるチャットを公開したことだ。

この流出したチャットには、就職情報サイト「リクナビ」が運営する「学生向けオンラインセミナー」担当者のものと思われる、「自分の質問に自分で答えるのが辛すぎただけw」「サクラを仕込めるってオンラインならではですね」「動物園を見事に手懐けていて素晴らしいですね」といった刺激的な発言が並んでいた。

つまり、今回の流出で、リクルートがオンラインセミナーで「サクラ」を仕込んでいたこと、さらに学生の集まりを「動物園」と揶揄していることなどが明らかになったのだ。

リクルートは2日後に謝罪文を発表。だが、「動物園」表現の真相などに言及はなく、また責任者の名前の記載もない、非常に簡潔な内容だった(画像:リクナビ公式Webサイト)

この暴露を受けて、リクルートは謝罪文を「リクナビ」に公開した。「一部報道について」と題した謝罪文では、社内調査によって明らかになった「経緯」を説明している。

本件について、弊社にて社内調査の上、事実確認を実施した結果、学生向けオンラインセミナーの質疑応答のコーナーにおいて、弊社社員の一部が参加学生を装い、質問を投げかけていたことや、学生の皆さまに対して不適切な発言を行っていたことが分かりました。

最後は今回の不祥事を改めて「総括」したうえで、再発防止策に触れ、こう結んでいる。

弊社としましては、弊社社員が、質疑応答の際に、参加学生を装い質問を投げかけていた行為や、「サクラ」などの不適切な表現を用いていたことについて、不誠実な行為であったと大変厳しく受け止めております。
今後、このような行為が再発しないよう、社内における教育、啓発により一層注力してまいります。
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