家計が「円売り」に動くとき円安の本番が到来する 資産防衛としての「円から外貨へ」という必然

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実際、「半世紀ぶりの安値」が続く実質実効為替相場(REER・物価格差を考慮し、主要貿易相手国に対する通貨の実力を測る指標)が象徴するように、日本が海外に対して持つ購買力はこの上なく弱まっている。

円の実質実効為替相場

よって外貨運用を増やすこと自体に相応の合理性もある。円の購買力が弱いからこそ海外から輸入される財の値段が押し上げられ、毎日のように値上げが報じられる状況に直結する。

片や、海外から日本へやってくる訪日外国人観光客(インバウンド)は「弱い円」の裏返しである「強い外貨」を背景として旺盛な消費・投資意欲を発揮し続けている。

「弱い円」と「強い外貨」に諦観

日本人の多くは「こんな高いホテル誰が泊まるのか」「こんな高い鮨、誰が食べるのか」「どうせインバウンド向けでしょう」という会話をしたことがあるのではないか。これは「弱い円」と「強い外貨」に対する諦観に基づいた会話であり、「もう円で買えるものは少なくなっている」という日本人の胸中が透ける。

こうした状況に対し名目賃金が上昇してくればよいが、大きな望みは持てない。

6月6日に発表された4月の実質賃金は、前年比マイナス3.0%と13カ月連続でマイナスだった。日本人の懐事情は確実に貧しくなっている。

このような状況が極まっていった場合、合理的な経済人ならば、資産を「弱い円」ではなく「強い外貨」で持つという意欲は強まるはずである。毎日のように「円は安い(≒外貨は高い)」という情報にさらされれば、自国通貨の脆弱性に愛想を尽かす向きは増えて当然である。

事実、円の対ドル相場は2019年12月から足元までの間に、1ドル=110円から140円へと30%弱も下落している。これまで一番安全だと考えられていた「自国通貨建ての現預金」に置くだけでこれほど目減りしてしまった以上、何らかの形で対策を打とうと考えるのは普通である。

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