労働者が大増税時代に「見限るべき社長」の4特徴 「コスト削減」「安売り競争」の会社に未来はない

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ですので、どんな企業で働くべきかを、1人ひとりが本当に真剣に考えなくてはいけないのです。

ついていくべき社長、見限るべき社長

給料を上げてくれる可能性が高い企業を見定めるには、各社を率いる社長の能力、意欲、そしてどのような経営戦略を標榜しているかを見極めなくてはいけません。具体的には、以下に挙げる特徴を備えているのが、ついていくべき社長だと言えます。

(1)イノベーションを重視する
(2)新しい需要(市場)の発掘をしている
(3)10年先の戦略を立てている
(4)輸出を重視している
(5)調査・分析をして、論理的思考が出来ている
(6)高齢者マーケットを攻める

逆に、見限るべき社長の特徴は次のとおりです。

(1)売り上げを増やせない
(2)付加価値を理解していない
(3)単価を下げる、または上げようとしない
(4)コスト削減を重視する

人口が減少し高齢化も進むので、今後の日本では既存の商品が売れにくくなり、余剰が生じやすくなります。日本で失われた需要を補うため、輸出を増やすのは比較的頭に浮かびやすい対処法ですが、実際に実行できている企業は限定されているのが現実です。

また、これまでの日本ではあまり高く売れない、つまり付加価値の低い商品を丁寧に作って商売をしてきましたが、今後は多少価格が高くても多くの人が欲しがる、今より高付加価値の商品を開発し、こういった商品を世の中に普及させる方向に転換するべきです。

このように頑張って輸出を増やしたり、より高付加価値商品への転換ができる企業で働いていれば、これから訪れる厳しい時代も耐え抜ける可能性が高いと判断して間違いないと思います。 

つまり、変わりゆく世の中に機敏に対応してビジネスモデルを変革し続けられる企業だけが、同時に従業員も守ってくれるのです。

一般に、こういう企業でリーダーシップを発揮している経営者は、国に対してイノベーションを後押しするような施策を求めます。

ですが現実には、今説明したような将来を見据えたかじ取りができない経営者が少なくないのが現実です。そういった経営者は現状維持をよしとし、ビジネスモデルの変革もせずに、減っていく需要を補うため、単価を下げて過当競争を激化させています。

結果として売り上げが伸ばせないのですが、その分を従業員の給料を据え置いたり、労働環境を悪化させるのにもかかわらず非正規雇用を増やすなどして賄おうとします。結局、最終的に割を食うのは労働者なのです。

実際、こういう企業からは、国に対して現状維持のため「需要を増やす」という名目のもと、消費税廃止やバラマキともいえる補助金の拠出を求める声が挙がっています。

時代の変化に果敢に向かって戦う意欲と能力を持った社長の下で働くか、変革が遅れてすでに死に体になって、コスト削減と単価の引き下げしかできない社長の下で働くか、人口減少時代にどちらが賢い選択かは、言わずもがなでしょう。

これまでの日本では、企業側が労働者を評価し、選択するのが当然でした。しかし、そんな時代は終わりを迎えています。

これからの時代、この国で働き続けるのであれば、自分や家族のため、そして国の将来のために、企業に対して厳しい評価の目を向け、現状維持しかできない経営者はどんどん見限るべきです。

デービッド・アトキンソン 小西美術工藝社社長

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David Atkinson

元ゴールドマン・サックスアナリスト。裏千家茶名「宗真」拝受。1965年イギリス生まれ。オックスフォード大学「日本学」専攻。1992年にゴールドマン・サックス入社。日本の不良債権の実態を暴くリポートを発表し注目を浴びる。1998年に同社managing director(取締役)、2006年にpartner(共同出資者)となるが、マネーゲームを達観するに至り、2007年に退社。1999年に裏千家入門、2006年茶名「宗真」を拝受。2009年、創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手がける小西美術工藝社入社、取締役就任。2010年代表取締役会長、2011年同会長兼社長に就任し、日本の伝統文化を守りつつ伝統文化財をめぐる行政や業界の改革への提言を続けている。

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