「協調性のない高齢者」のほうが"若い"という根拠 「心のブレーキ」が老いを加速させるその理由

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ところが同じ高齢者でも若々しいタイプは違います。

結果がわかっている世界より、予測できない世界のほうを選びたがります。たとえばみんなで食事をするときでも、メニューに聞いたことのない料理名を見つけると「これなんだろ? 食べてみるかな」と面白がります。周りが「やめとけ、食べ残したらもったいない」と声をかけても「そのときは手伝ってくれ」と愉快がります。

結果はもちろんいろいろです。思いがけない美味しさに大喜びするときもあれば、やっぱり口に合わなくて「失敗したなあ」と後悔するときもあります。

でもこういうタイプはめげないのです。

同じような場面になればまた未知のメニューに挑戦します。旅行や読書、あるいはファッションでも同じです。知り尽くした安心感より、未知の経験や世界のほうに惹かれてしまいます。ワクワク、ドキドキすることが快感だからです。

年齢が若くても「心の老い」が始まっている人

こういうことは、必ずしも高齢者に限った話ではありません。年齢に関係なく、結果がわかっている安心を選ぶ人と、予測できない世界のワクワク感を選ぶ人がいるからです。わたしはここにも心の老いや若さが表われていると思います。

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どんなに年齢が若くても、結果が予測できる安心・安全を選ぶ人は、すでに心の老いが始まっている可能性があります。そういう人が結局、ある年齢になると「わたしももう70歳過ぎたのだから」と意識し、年相応の分別や落ち着きを言い聞かせ、好奇心を抑え込んで自分の願望を封じ込めてしまいます。年齢呪縛に捕まりやすいのです。

なぜなら年齢というのはいちばん確かな現実になります。

やってみたいことや、試してみたいことがあっても、「もし失敗したら」と考えるとついためらいます。結果を予測できない世界に踏み出すことは勇気が要ります。たとえ心がそれを求めているとしても、「いくつになったと思うんだ」と実年齢を言い聞かせることで諦めがつきます。確かな現実を持ち出せば、心の不自由を受け入れることも納得できるのです。

和田 秀樹 精神科医

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わだ ひでき / Hideki Wada

1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、浴風会病院精神科医師を経て、現在は和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わる。『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『80歳の壁』(幻冬舎新書)、『60歳からはやりたい放題』(扶桑社新書)、『老いたら好きに生きる』(毎日新聞出版)など著書多数。

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