「協調性のない高齢者」のほうが"若い"という根拠 「心のブレーキ」が老いを加速させるその理由

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心の老いは年齢に関係なく始まります。通常なら脳が老化するはずもない10代20代であっても、心の自由を封じ込めようとすることがあるからです。

自分の意見や考えていることをのみ込む、やってみたいことを我慢する、周囲に合わせて行動する、こういったこともすべて心の自由を封じ込めることになります。

考えてみれば学校教育そのものが心の自由を制限してきました。友だちが多くてみんなと仲良くできる子が「いい子」です。親や先生の言うことに従うのが「いい子」です。和を乱さないとか、社会の道徳やモラルを守るのが「いい子」です。

この流れは大学に入っても続きます。

高等教育は本来、それまでに学んだ知識をもとに自分で考えたり、推理したり、あるいはそれを試してみる学生を育てることだったはずですが、大学生になっても上から教え込まれた理論や学説をそのまま覚えることが勉強になってしまいます。いくら自分で自由な発想をしても、教わった理論や学説から外れていれば評価されません。心の自由を抑え込まれたままで社会に出るのです。

社会に出れば今度は協調性ですから、ここでも上司や同僚に合わせることが生き延びる道になります。世の中の風潮とか常識に従うしかなくなります。同調圧力にも簡単に負けてしまうのです。

周囲に合わせているかぎり安全です。誰からも非難されないし、目立つこともありません。無意識のうちに安全、安心を選んでしまうというのも心の老いの表われでしょう。なぜならワクワクしたりドキドキしたりすることがないからです。

「これを言い出せばみんなに非難されるだろうな」

「でも共感してくれる人だっているかもしれない」

どっちになるかわからないけど、とにかく自分が思ったことを話したり、やりたいことを実行するときにはドキドキするはずです。心が老いてくると、そういうドキドキすることやワクワクすることを避けるようになってきます。

「年齢呪縛」に捕まりやすい人の生き方

高齢になってくるとほとんどの人が慣れた世界を選ぶようになります。たとえばメニューを眺めて初めての料理と食べ慣れた料理があれば、どうしても食べ慣れたほうを選びます。

これは味つけや素材がわかっていたほうが安心だからです。脂っぽくて食べられないとか固くて食べられないとか、そういうことだけはなくなります。

旅行や読書でも同じです。聞いたこともない場所より、何度も出かけた観光地、全国的に有名な町や温泉を選びます。読書もよく知っている作家や好きなテーマの本を選びます。すべて、大きく期待を裏切られることがないとわかっているから安心なのです。

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