岸田政権の「奇妙な安定性」を支える2つの要因 「アメリカ子会社の社長」を「愚民」が支える構図

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調査機関により差はあるが、ここのところ岸田政権の支持率は40%台後半以上の「安全圏」で推移していて、危なげがない。一部には、広島でのサミットが成功に終わった余勢を駆って、解散総選挙に打って出るのではないかという観測もある。

岸田政権を支える「2つの要因」

野党の状況を見るに、総選挙を行って与党が大敗することはないだろう。立憲民主党が野党第一党から後退して、日本維新の会が伸びて、後者と自民党の一部が将来手を結ぶような政治的地殻変動が起こるかもしれないが、影響は将来の話だ。

■ 岸田政権の支え・その1「愚民均衡」

当面の岸田政権は、奇妙に安定している。この安定を支えている1つの要因は、国民、政治家、官僚などが一様に近視眼的で、提示された目先の損得に反応するだけの「愚民」だからではないか。

「愚民」は、元の状態をAとして、B、C2つの状態を考えたときに、Cがより良い状態であることまで考えずに、提示されたBがAの状態での自分にとっての損得において少しでもマシなら、そこで満足して判断を停止する。Cの状態がより望ましいのにBを提示されていることに不満や文句を言うのではなく、そもそもCの状態について思いをはせないのだ。

この仮定の下では、経済全体として著しく非効率的であっても、庶民世帯も富裕層世帯も、少しではあっても政府が電気料金を下げてくれたことに満足して、その先を考えない。

政治家は多人数の満足を得たことに満足で、官僚も一応仕事ができたことで満足だ。そして、同様の愚民満足化政策を、次にはガス料金に、さらには食料品のようなものにまで広げていくなら、仕事がなくならない点で政治家・官僚には好都合だ。この不毛な満足状態を「愚民均衡」と名づけよう。

国民がこの種の愚民であることを仮定し、政治家は多くの「票」を取りたいだけなのだと仮定すると、選挙による多数決民主主義はこの愚民均衡を強力に固定する要因となりうる。この状況が心地よい人にとっては、状態Cがベターであることを訴える意見は邪魔になる。

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