日経平均が今後も3万円を維持できると読む理由 世界的に製造業の底打ち感が強まっている

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そこで電子部品の出荷と在庫の伸び率を比較した出荷・在庫バランス(鉱工業生産統計ベース)をみると、やはり今年に入ってから底打ちの兆しがある。

依然として過剰在庫が残存している模様だが、最悪期は脱しているように見え、ダウンサイドリスクは低減していると判断される。今後中国経済が回復力を強めるなど、追い風が吹けば生産活動が底入れする可能性は高まっていく。そうであればTOPIX(東証株価指数)の予想EPSは半導体関連が多く含まれる電気機器セクターに牽引され、水準を切り上げていくだろう。

日経平均が今後も3万円台を維持できそうな理由

また国内では内需の回復を裏付けるデータが相次ぎ、日本株の魅力を高めている。まず4月の景気ウォッチャー調査は日本の内需が力強さを増していることを印象付ける結果であった。

現状判断DIは54.6へと前月比1.3ポイントの改善を示し、先行き判断DIに至っては55.7へと同1.6ポイント上昇し、双方ともパンデミック発生以降の最高水準に比肩し、2019年水準を明確に上回った。

また、5月23日に発表されたサービス業PMIは56.3と統計開始以来の最高を記録。生活必需品の値上がりによって家計の圧迫は続くが、それでも消費者が貯蓄よりも消費を優先している姿が透けて見える。その背景にあるのは賃金上昇率の高まりと、それによる消費者マインドの改善であろう。連合の集計によればベア相当部分の春闘賃上げ率は約30年ぶりの高水準であるプラス2.1%となっており、これが個人消費の源泉であると考えられる。

日本株はこうした好条件が揃って上昇した。先行きは、アメリカの銀行不安など海外発のダウンサイドリスクに注意は必要だが、国内景気については、中国からのインバウンド再開などにも支えられて底堅さを維持するとみられ、投資家の期待を支えよう。

日経平均は5月に急上昇した反動もあり、短期的には利益確定売りに押されそうだが、それでも3万円台を維持できるのではないか。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

藤代 宏一 第一生命経済研究所 主席エコノミスト

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ふじしろ こういち / Koichi Fujishiro

2005年第一生命保険入社。2010年内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間『経済財政白書』の執筆や、月例経済報告の作成を担当。その後、第一生命保険より転籍。2018年参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。2015年4月主任エコノミスト、2023年4月から現職。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当は金融市場全般。

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