三菱地所、大手不動産デベで「独り負け」の真因 足元の不動産市況は絶好調でも尽きない悩み

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足元の堅調な不動産市況を踏まえて、大手6社は2023年度も引き続き最高益を見込んでいる。中でも三井不動産は2023年度の純利益2100億円(前期比6.6%増)を計画。不動産デベロッパーで史上初めて純利益が2000億円の大台を突破する見通しだ。

コロナ禍で大打撃を受けた「東京ドーム」やホテル・リゾートの需要が急回復するほか、オフィスビルなどの賃貸事業の拡大が大きな要因だ。

とくに2023年度は、2023年3月に全面開業した東京駅前の大型複合施設「東京ミッドタウン八重洲」(総延べ床面積は約28.9万平方メートル)や、2022年10月に竣工したアメリカ・ニューヨーク州の大型複合施設「50ハドソンヤード」(延べ床面積は約26.9万平方メートル)が本格的に収益貢献する。

「50ハドソンヤードは当初計画の約2倍の賃料で入居テナントが決まっており、竣工時の稼働率も約85%と想定以上だ。テナントとは15~16年程度の長期の賃貸契約を結んでいるため、安定した収益貢献が期待できる」と、三井不動産の村田忠浩経理部長は語る。

三菱地所「海外不動産は売り時ではない」

一方、絶好調な大手不動産会社の中で唯一、苦戦を強いられている企業がある。三菱地所だ。2023年度の同社の営業利益(本業での儲け)は2640億円と前年度比で11%減少する計画。国内の固定資産などを売却することで、かろうじて純利益は過去最高を更新するものの、前期比での増益幅はわずか0.4%とほぼ横ばい。

売上高で見た場合、およそ6割強の規模の住友不動産に純利益で追い抜かれる計画だ。

三菱地所は、前2022年度にイギリス・ロンドンの大型オフィスビルやアメリカの大型物流施設などの海外不動産を売却しており、今年度はその反動減を見込んでいる。決算会見の場で三菱地所の梅田直樹取締役は、「売却する弾(不動産)はあるものの、欧米をはじめとする海外では必ずしも不動産の売り時ではない」と説明する。

柱であるオフィスビルの賃貸事業も苦しい。三菱地所の2023年3月末時点でのオフィス床は約400万平方メートルと、前年同月比で3.4%減少。これは、地盤である東京・有楽町で「有楽町ビル」(延べ床面積は約4.2万平方メートル)と「新有楽町ビル」(延べ床面積は約8.3万平方メートル)が建て替えのため閉館し、稼働物件が減るからだ。

新たに竣工する物件も限定されるため、「今後2~3年のオフィス賃貸事業は苦しいというのが本音。しばらくは我慢のときだ」(梅田氏)という。

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