算数が苦手な子になる「親が言いがち」余計な一言 サピックス小学部に聞いた「算数と数学」の違い

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広野:算数の真のおもしろさを感じていた子ほど、数学の初期段階のパターン学習に退屈さを感じる危険があります。しかし、数学の初歩段階を乗り切れば、その奥に広がるよりおもしろい領域に辿り着くことができます。高度な未知の問題にもチャレンジできるようになるので、数学がどんどん好きになっていくと思います。

例えば、算数の段階では円錐の体積の求め方は、<底面積×高さ÷3>を習うんです。この時点では、「なぜ3で割るのか」については触れられず、覚えるしかないんです。しかし、数学で微分積分を学ぶと、「なぜ3になるのか」をシャープに証明できるようになります。数字を使って探究することが好きな子にはたまらないですよね。

算数と数学の共通項とは?

佐藤:算数と数学の違いについてご説明いただきましたが、基本的には共通する部分が多いと捉えていてよいのでしょうか。

広野:算数と数学は、数と図形を扱い、表やグラフから情報を整理する教科であるという意味で基本的に共通しています。昨今、中学受験では立体図形に関する問題が多く出題されています。

具体的には、「ある図形を切断してみるとどんな形ができるか」「この図形を真上から見るとどのように見えるのか」といった空間的な図形把握能力を問うような問題が多く出されるようになりました。数学の問題で立体図形の問題を解く際も、空間図形をイメージできるかどうかはとても重要になります。

もっとわかりやすくいうと、計算力は算数でも数学でも欠かせない力です。計算がしっかりできるという土台は、中学校に入っても大事です。

佐藤:「私が文系だからこの子も算数は苦手よね」「両親どちらに似ても理系ではないわ」といった言葉を耳にすることもあります。そうした保護者とお話しをする時に、どんなことを伝えますか。

広野:こうしたことをおっしゃる保護者の方は一定数いらっしゃるのですが、保護者の苦手は子どもには関係はありません。半分謙遜もあり、「この子、本当に算数が苦手で。私も嫌いだったから仕方ないわね」といった話を、子どもの前でする方もいます。

親の語っていることを、子どもは思った以上に聞いているものです。こうした話を聞いて、「苦手だ」「どうせ自分はできない」といったことが刷り込まれてしまう危険性があると思います。

例え、一時的に子どものテストの点数が悪かったとしても、小学校時代の得意・不得意は簡単に変わります。「この子は算数が苦手」と固定的に捉えないほうがよいでしょう。

佐藤:得意・苦手は変動的なものだ、とおおらかに捉えることが必要ですね。しかも、保護者は自分と比較をしないこと。これは「自分が苦手だから苦手」というだけでなく、「自分はできたのになんでできないの」という比較も意味がないといえますね。

子ども自身が「算数が苦手」という意識を持っている場合に、克服することはできるのでしょうか。

広野:得意か苦手かということは、相対化の中から感じていることが多いです。例えば、塾の中で算数の点数が取りにくいのであれば、「私は算数ができない」と思ってしまいがちです。

あくまで、クラスの中、塾の中、学校の中で、自分は相対的に点数が取れないから苦手ということなのです。だから、環境が変われば、「苦手」という感覚が払拭されるということはよくあります。

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