日本車メーカーはなぜこんなに「お気楽」なのか EV軽視の姿勢が世界でシェアを奪われる結果に

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一見無敵の巨大企業を引きずり倒す「運命の逆転」は特別なことではなく、どの業界でも起こってきた。通常、新しい業界には多くの企業が参入し、支配的なテクノロジーが出現すると、少数のリーダー企業に支配される。

エレクトロニクスのように急速な技術変革が頻繁に起こる業界では、企業の興亡も同じように頻繁にみられる。一方、自動車のように、基盤技術が長期間安定している分野では、いくつかの企業が何十年も支配することが可能だ。

しかし、テクノロジーと市場の状況が大きく急激に変化して、既存のビジネスモデルが毀損される場合、優勢だった企業は目の前の変化を理解することすら困難であるため、古いテクノロジーとビジネスモデルに固執する傾向がある。

アメリカ勢の失敗を繰り返そうとしている

1960年代から70年代にかけて、戦略的に状況を把握できなかったアメリカの巨大企業は、テレビ、鉄鋼、コンピューターチップ、自動車など、いくつかの重要な分野で日本企業に取って代わられた。

アメリカ勢は、時代が変わったことを認識するのではなく、日本のさまざまな慣行を取り上げ、日本側に不正行為の疑いがあるという解釈を主に、あるいはそれのみを主張した。この告発が、何十年にもわたる貿易摩擦につながったのだ。

今日の日本の自動車メーカーは、1970年代から80年代にかけてデトロイトスリーが取ったのと同じような行動を取っているように筆者には見える。それによって、自分たちがアメリカ勢に対して行ったことを、中国勢が自分たちに行うことを許してしまっている。トヨタ、ホンダなどにとって、このハンディキャップを認識して解決することは、不可能ではない。しかし、時間は彼らの味方をしてくれるわけではないのだ。

リチャード・カッツ 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Richard Katz

カーネギーカウンシルのシニアフェロー。フォーリン・アフェアーズ、フィナンシャル・タイムズなどにも寄稿する知日派ジャーナリスト。経済学修士(ニューヨーク大学)。著書に『The Contest for Japan's Economic Future: Entrepreneurs vs. Corporate Giants 』(日本語翻訳版発売予定)

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