日本車メーカーはなぜこんなに「お気楽」なのか EV軽視の姿勢が世界でシェアを奪われる結果に

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日本の自動車メーカーは、ハイブリッド車に重点を置き、EVに注力する時が来たらその時点で追いつくことができる、と想定しているようだった。しかし、消費者のブランドロイヤルティの問題だけでなく、社内の企業文化の問題からも、追いつくことが容易かどうかは明らかではない。

著しく成功している企業のマネージャーやエンジニアは、元来成功しているビジネスモデルやテクノロジーに執着しすぎることがよくある。彼らは、結局は自分たちの優位性を覆すことになるテクノロジーが、一見精巧さで劣ることからしばしば見下してしまう。

エコノミスト誌は、「日本はいかに世界のEV競争で劣勢に立たされているか」という見出しの記事で、「複雑なハイブリッド車を磨き上げてきた日本企業のエンジニアたちは、機械としては単純なEVから心を揺さぶられることもなかった」と報じている。

さらに、多くの日本企業の幹部は内部から昇進しているため、自分を昇進させてくれた先輩の方針からあまりにも乖離することを躊躇する傾向がある。裏切っているように感じてしまうのだろう。佐藤氏は豊田氏の路線からどの程度離れることができるのだろうか。

燃料電池への思い入れが強すぎる

さらに悪いことに、日本政府と自動車メーカーは、水素を使用する燃料電池車への思い入れが非常に強い。実際、政府はEVよりも燃料電池車に多くの補助金を割り当てている。

2021年の東京オリンピック前、この大会は燃料電池によって製造される電気を活用し、燃料電池で走行する車両が参加者を輸送する、と東京都は説明していた。舛添要一元東京都知事は「1964年の東京オリンピックは新幹線を遺産として残した。来るオリンピックでは、水素社会が遺産として残るだろう」と誇らしげに語っていた。

実際にはオリンピック村全体はカバーされず、水素を燃料とする建物は1例だけだった。そして、短いルートでわずか数台のバスが燃料電池で走行していた。トヨタの燃料電池車MIRAIは、ほぼ10年前の導入以来、世界で2万2000台しか販売されていない。

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