アメリカの株価に一段と下落圧力が高まってきた 原油価格下落は限定、インフレ高止まりの恐れ

拡大
縮小

一連の減産を受け、WTI先物価格は3月末には1バレル=75ドル台で推移していたが、4月12日には一時83ドル台まで上げ幅を拡大したことは記憶に新しい。

このように、サウジをはじめとした産油国が「価格下落を容認しない」という強固な姿勢を示した意味は小さくない。確かに足元の価格は景気後退懸念やそれに伴う需要の落ち込みに対する懸念などから、売りに押し戻される展開となっている。だが、「産油国は今後も追加減産に踏み切るはずだ」との安心感が下支えとなる中、これ以上の下落局目では、むしろ投機的な買いを積極的に呼び込む可能性が高い。

すでに国際エネルギー機関(IEA)も追加減産措置を受け、「今年後半には世界市場がかなりの供給不足に陥ることになる」との警告を発するなど、中長期的な需給逼迫懸念はなお根強い。原油市場はこれ以上の下値は限定的だとみておいたほうがよいだろう。

粗糖やコーヒー豆などの価格は中期で上昇トレンド

原油市場の値動きだけに気を取られていてはいけない。実は、中期で見ると、商品市場全体に買いが集まっていることに注目する必要がある。

例えば、あまりなじみはないが、アメリカのインターコンチネンタル取引所(ICE)で取引されている粗糖(Sugar-11)は4月に入って1ポンド=27セント台と、2012年以来の高値まで上昇した。また、ココアも2020年11月以来となる1トン=3000ドル台を記録した。さらにアラビカコーヒーも、歴史的な高値圏である1ポンド=2ドル台を再び試す水準まで値を切り上げた。

豊作が見込まれる小麦などの穀物市場こそ、比較的落ち着いた動きをしているが、これについても直近ではロシアが穀物輸出の合意延長(黒海を通じたウクライナの輸出港からの穀物輸出の安全を保障する合意)を事実上停止しているとの報道もあり、懸念要因は絶えない。

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