エンジン不正の日野自動車が抱える「3つの課題」 不正発覚から1年、信頼回復への険しい道のり

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第1に北米を中心とした司法リスクだ。

「エンジン認証試験の過程において課題が生じた」として、2020年からアメリカ司法省による調査が続いている。日本国内での不正とは別とされるが、会社側は「課題を整理したうえで司法省ならびに認証当局と真摯に向き合って対応を進めていく」(小木曽社長)との説明にとどめている。加えて、アメリカとオーストラリアで不正エンジンに起因する損害を被ったとして集団訴訟も起こされている。

北米での認証問題では、過去3年間で合計432億円の特別損失を計上しているが、これで打ち止めになるか定かではない。集団訴訟も原告側の請求金額が明らかになっていない。このため、追加の損失懸念は消えていないのだ。

国内では顧客の日野離れも

第2に国内での回復の浸透度だ。

依然として取り消されたままの車種は国内販売の23%分(2021年度実績)に及ぶ。それらのエンジンで、法規を満たすだけの排出ガス性能を開発できるのか、できたとしても認証に必要な劣化耐久試験は一般に10カ月はかかるとされる。

すべてのエンジン、車型の型式指定を再取得して出荷を再開しても、販売の正常化には時間を要する。というのも、トラックは荷台部分を用途に合わせて改造することが一般的だからだ。「架装メーカー」と呼ばれる改造業者は、日野が出荷停止している間は他社からの受注で食いつないできた。日野が出荷再開したからといってすぐに対応できるわけではない。

また、顧客の日野離れも起きている。複数ブランドのトラックを保有しているある物流業者は、「不正発覚後、日野のトラックの買い替えができなかったので他社製に切り替えた」と話す。国内の中・大型トラックの市場で日野は長らく首位だったが、2022年度に首位の座をいすゞに奪われた。

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