底抜けに明るい「102歳ばぁば」の爽快な人生哲学 83歳で夫を見送り約20年、毎日を楽しむ習慣

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悩み事は日記にちょびっと書いたら、心がすーっとする。自分で納得するんですね。しんどい思いを引きずるのも打ち切るのも、自分自身です。自分の心は自分で育てるしかない。いくつになっても切磋琢磨ですなぁ」

「ひとりでも毎日を楽しんでおります」

地域の人を大切にしてきた哲代さんは人気者。坂の上にある哲代さん宅には、近所の人が入れ代わり立ち代わり訪ねてくる。台所の土間に椅子を並べて、おしゃべりに興じる毎日だ。

元気に料理をする石井哲代さん(写真提供/中国新聞社)

このようなバイタリティーあふれる行動を支えるのは、旺盛な食欲だ。

毎日、畑で育てた野菜を使い、食事の支度をする。朝食の定番は、いりこ入りのみそ汁だ。

「食べ物の好き嫌いはありません。それも、ようけ食べます。ご飯の量はいつも2杯」

ご近所さんからのおかずのおすそ分けも、楽しみのひとつになっている。

長い距離を歩くのがつらくなり、89歳のときにハンドル付き電動車いす(シニアカー)を購入。坂を下った先にある、ご近所さん宅を訪れるのに大活躍している。新しい家電も使いこなす哲代さんの挑戦が、今も元気に活動する秘訣かもしれない。

哲代さんの行動範囲を広げてくれるシニアカー。畑への通勤やお寺への墓参りなどで活躍(写真提供/中国新聞社)

年をとれば「できないことが増えるけど、そこは嘆いてもしょうがない」というのが、哲代さんのスタンス。“できなくなったこと”を追わず、変化を受け止めている。

例えば、以前は冬の掛け布団を毎朝、自分で押し入れにしまっていたが、昨年ごろから持ち運ぶのが難しくなった。

「年相応に身体はガタついております。布団は畳むだけにしました。このやり方もええですな。無理してケガしちゃいけんからなぁ(笑)。でもね、毎日のみそ汁は作れます。みそ汁の支度ができて、ええねえと、しみじみ思いよるん。自分でこしらえると、感動的においしいの」

老いの変化を柔軟に受け入れて、くよくよしない。できることを愛おしむ姿は、丸くかわいらしい。

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