【産業天気図・鉄鋼】需給逼迫し製品価格の値上げ浸透。高炉は過去最高水準の利益予想をさらに増額

高炉大手の前期業績は過去最高水準を記録し、足元も『快晴』の状況。その牽引役は自動車、造船、家電業界向けの高級鋼材出荷で、需給が逼迫している状況は来期も続きそうだ。さらに原材料の高騰分(7割)を鋼材価格に転嫁する交渉は順調で、造船向けの厚鋼板についても、値上げがこのほど決まった。まさに『快晴』である。自動車は春先から値上げ転嫁ができており、今期は当初の増収増益見通しをさらに上方修正する勢いだ。
 中でも、業界最大手の新日鉄はトヨタ自動車と今期4月分出荷からの販価を1トン当たり1万円値上げで決着したとされる。これまでトヨタのような大口需要家向け(ヒモ付き)の価格は歴史的経緯もあって国際水準から見ても割安で来た。が、鋼材の安定確保という観点から今回、原料価格高騰分の転嫁に応じた。
 晴れ間の中にも『曇り』があるとすれば、JFEホールディングス。子会社のJFEエンジニアリングが鋼鉄製橋梁談合事件で指名停止処分になった。当面は受注残があるから表面化しないが、これが底をつくと、2005年度下期から06年度にかけての業績下押し要因になる。
 粗鋼を業界全体で年間1億トン以上生産する高炉大手は、リスクを探せばキリがない。が、どのリスクも業績を直撃するものにはならず、需要増と市況安定化によって、少なくとも2006年度前半までは『快晴』が続きそうだ。1番目のリスクは鉄鉱石がさらに値上がりすることだが、輸入大国の中国が購買窓口を業界団体に一本化したことで、オーストラリアやブラジルの供給業者との交渉力で買い手優位になり、売り手優位の大幅値上がりは回避できそうだ。原油高騰も気にはなるが、これもコークス炭が主原料なので大打撃はない。また、金利上昇リスクは新日鉄が1%上昇で連結ベース130億円の負担増だが、これも、同社にとってこなせるレベル。ただし、為替が急激な円高にならずに、110円台で推移すればの話だ。晴れ間にあえて暗雲が立ちこめる材料を探せば、100円を切る急激な円高だろう。
【古庄英一記者】


(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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