オリンパス「カメラ事業」、売却されて初心に回帰 分社化を機に自覚した経営の弱みと製品の強み

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JIPも、ソニーから分社化したVAIOなど過去の再生事例で培った知見をもとに助言を行う。OMデジタルの当面の目標は、新規株式公開(IPO)で独立ができる程度の実力をつけることだ。

OMシステムのカメラ
一部製品には「オリンパス」のブランド名が残るが、時間をかけて「OMシステム」に統一する方向だ(撮影:尾形文繁)

今後は、アウトドア市場に特化したカメラで着実にシェアを取ることに加えて、BtoB領域の強化を目論む。

想定しているのは、ベトナムの自社工場を生かしたEMS(電子機器の受託開発・製造サービス)などだ。

カメラの製造にはアナログな生産に関する知識も求められる。カメラで培ったものづくりのノウハウを自社製品以外にも展開することで、カメラ市場が縮小する中でも成長を目指す。

自立し生き残ることはできるか

映像事業を切り出す判断をしたオリンパス。竹内康雄・現会長が社長となった2019年以降、同社は内視鏡事業を軸にした医療分野に集中することを目的に、映像事業と顕微鏡などを手がける科学事業を売却した。

一般消費者向けの製品投入やサービスを行う映像事業と、研究機関向けの割合が大きい科学事業を例にとっても、ビジネスモデルは異なる。人体に入る製品を扱い、認可などに時間を要する医療分野となると、なおさらビジネスのスピード感が大きく異なる。

「ビジネスモデルが大きく異なる3つの事業は結局縦割りになっていた」と竹内会長は振り返る。3つの事業はどれも光学技術を武器にしたものだが、ビジネスモデルが大きく異なる中では協業も難しく、事業間シナジーは少なかった。

利益面ではオリンパス全社の足を引っ張っていたといえる映像事業。OMデジタルとして自ら稼ぎ生き残ることはできるか。厳しい事業環境下で、その実力が試される。

吉野 月華 東洋経済 記者

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よしの・つきか / Tsukika Yoshino

精密業界を担当。大学では地理学を専攻し、微地形について研究。大学院ではミャンマーに留学し、土地収用について研究。広島出身のさそり座。夕陽と星空が好き。

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