東京都「広告トラック」規制に歓迎の声多数のワケ 「都外ナンバーは対象外」の抜け穴がふさがれる

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広告トラック規制で、街中の風景も変わるでしょうか?(写真はイメージです。写真:Ryuji / PIXTA)

実際には、東京都は東京都屋外広告物条例などにより、広告トラックのデザイン規制を行ってきた。しかし、デザイン審査の対象は都内のナンバーに限定されて、都外ナンバーは対象外だった。つまり東京都以外のナンバーの広告車両が都内を走るぶんには審査対象にならず、これが抜け道になり、実質的には無法状態になっていたといわれる。

実際、トラックの電光表示装置などで映像を映し出すものなど、運転者の注意力を著しく低下させるおそれのある広告物などは禁止されていたが、当たり前のように都内を走行していた。

広告トラックは、走行費用、デザイン費、といったコストはかかるが、屋外広告の媒体費が高く、利用者数の多い繁華街においては、広告トラックを活用することには、費用対効果の面でメリットがあると見てよいだろう。また、看板のような静止型の広告と比べて、商圏にいる人々に効率的に訴求することもできるという点でも、優位性がある。

広告トラックが問題になる理由

歌舞伎町で外国人観光客がホストクラブやキャバクラの看板を、物珍しそうに撮影しているのを何度か目にしたことがある。たしかに、海外でこうした看板を見かけたことはない。

一方で、多くの日本人(というより、「東京などの大都市に居住、通勤する人たち」と言うべきか)は、こうした広告に見慣れてしまっており、「不適切ではないか?」という疑問も抱きにくくなっている。

2019年に公開されたアニメ映画『天気の子』の作品中に、実在する風俗系求人サイトの広告トラックが登場してネット上で多少の物議を醸したことがあったが、逆に言えば、制作側も、大半の観客も、この広告を問題とはしていなかったと言えるだろう。

広告表現に対する受容性や規制は国や地域によって異なっており、「日本は遅れている」とは一概には言い切れない。しかしながら、グローバル化が進み、多国籍、多民族の人々が日本各地に集まるようになった現在では、これまでにない配慮が必要になっているというのも、また事実だ。

今回の規制強化は、市民からの苦情がきっかけになっているが、表現の問題以外にも、騒音や交通面での問題も含まれている。

表現の自由は尊重されるべきであるが、路上のような公共の場においては「見たくない」、「聞きたくない」という人の権利の方が優先されるべきであろう。

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