これだけで済まない欧米金融不安「次の危機の芽」 不動産ファンドの資金流出が投げ売りを招く

拡大
縮小

上述したように、パンデミックに至る直前までは極めて速いペースで価格が上がっていたこともあり、「調整余地も大きい」と捉える雰囲気は強い。

過去1年で投資家における高値警戒感は一方的に強まっており、資金調達環境のタイト化もかなり進んでいる。市況の悪化を感じ取る投資家が多数となる中、直近では域外での金融不安も重なり、商業用不動産(CRE)を取り巻く環境はかなり悪化している。

2022年10~12月期、商業用不動産にまつわる取引がにわかに細っているというデータもあり、これに伴って価格も下がっている事実をECBは指摘する。

ここまで考えるとCRE危機は深刻化の余地をはらみながら、部分的にはすでに現実化しているとも言える。

カギはやはり「流動性のミスマッチ」

冒頭に述べた通り、危機が起きると想定した場合、やはり「カギとなる脆弱性(A key vulnerability)」は不動産ファンドに対する解約請求が押し寄せた際に直面する「流動性のミスマッチ」問題である。

「解約請求に対応するまでの期間」と「保有資産を現金化するまでの期間」を比較し、前者が後者より顕著に短い場合、ファンドは資金繰りに行き詰まる(流動性のミスマッチに直面する)ことになる。

現状、その危機にさらされやすい加盟国を特定するのは難しいものの、域内の金融安定を監視する欧州システミックリスク理事会(ESRB)の調査によれば、2021年7~9月期時点、オープンエンド型不動産ファンドの31%が流動性のミスマッチを抱えている。

次ページ脆弱性が高い国はどこだ
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT