台湾新幹線「新型車」日立・東芝連合受注の全内幕 難航した価格交渉、どう折り合いをつけた?

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高鉄は将来の利用者増に伴う輸送力増強の必要性を見越し、4編成を追加製造するオプションを川重に与えていた。

しかし、ベース車両の700系の製造は2006年に終わっており、2017年時点で700T製造に必要な部品が確保できないことが判明し、700Tの追加製造は不可能となった。

新幹線700系
台湾高速鉄路700Tのベースとなった新幹線700系。東海道新幹線からは2020年に引退した(写真:Jun Kaida/PIXTA)

高鉄は国際入札による新型車両の導入に方針を切り替えた。もっとも、多額の開発コストをかけても製造数がわずか4編成とあってはメーカーにとっては割に合わない。そこで、初期に製造された700Tはいずれ老朽化による更新時期を迎えることを見越し、その置き換え需要も考慮して発注数を12編成に増やした。

メーカー選定に6年かかった理由は

2019年2月および2020年8月に入札を実施した。たが、「メーカーが提示した価格と市場価格の差が大きいことや、入札書類の一部が要件を満たしていない」(高鉄)ことなどを原因として入札は不調に終わる。

戦略の見直しを行い、2022年3月に3回目の入札を実施。高速鉄道車両の開発経験を持つ海外メーカーを含む複数の企業が入札した。審査の結果、日立・東芝連合に優先交渉権が与えられ、3月15日に高鉄の取締役会が同連合への発注を決定するに至った。

2017年の新型車両導入方針の決定から実に6年。なぜ車両メーカーの選定にここまで時間がかかったのか。その理由を読み解いてみる。

台湾で高速鉄道を運営するのは高鉄だが、在来線を運営するのは日本の旧国鉄に相当する台湾鉄路管理局(台鉄)である。台鉄の路線には多数の日本製車両が走っている。つまり、台鉄は何度も日本メーカーから車両を購入しているわけだが、購入価格でもめたという話を聞いたことはない。その理由は台鉄が国営企業だからである。公共事業では予定価格が発表されている場合もあるし、予算書から目安をつけることもできる。

台鉄TEMU1000
日立が製造した台湾鉄路管理局(台鉄)のTEMU1000型。台鉄には多数の日本製車両が走っている(編集部撮影)
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