サムスン、好発進した後継体制の舞台裏 長男・李在鎔副会長体制の成果と課題

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IT以外の領域では、二次電池とバイオ分野に注力している。サムスングループは2010年に五大新事業を発表した。それは、バイオや製薬、医療機器、電気自動車用バッテリー(二次電池)、太陽光、LEDだ。これら5事業をグループの新たなキャッシュカウ(カネのなる木)に育てる計画だった。

しかし、これまで大規模な投資を行ったにもかかわらず、二次電池を除けばはっきりとした成果はない。太陽光は事実上、撤収作業を進めている。LEDもまた、新たな方向性を定める時期に来ている。二次電池とバイオでは必ず成果を出さなければいけないということを意味する。

この分野は、サムスン電子以外のグループ企業が中心となっている。サムスンSDIが担当しているリチウムイオン二次電池は、電気自動車市場がいち早く成長しているため、続々と成果を出している。スマホや電動工具など小型電池分野では世界トップのサムスンSDIは、電気自動車バッテリーをBMWやフォルクスワーゲン、アウディなどドイツの三大メーカーにすべて納品している。一定の技術力が認められたということだ。

二次電池とバイオ事業が今後の核に?

李副会長も力を入れている。サムスンSDIは今年2月、オーストリアの自動車部品メーカー・マグネシュタイヤの電気自動車バッテリーパック部門を買収することにした。この分野では世界的な競争力を持つ会社だ。サムスンSDIとしては、これによる物量増加と収益性の改善を期待できる。

バイオ事業は2011年、サムスン電子と第一毛織が出資して設立したサムスンバイオロジックスが主導する。同社は世界的な製薬企業であるブリストル・マイヤーズやロシュ、メルクなどとバイオシミラー(バイオ後続品)の委託生産契約を相次いで締結した。仁川市にある15万リットル規模の第2工場が完成すれば、世界トップ3内の生産設備を持つようになる。

同社の子会社であるサムスンバイオエピスは3月10日、食品医薬品安全処に自社製造のバイオシミラー「SB4」の販売許可を申請した。同社は1月、欧州医薬局(EMA)にも販売許可を申請したが、韓国内でサムスンが上市するのは初めてとなる。SB4はリウマチ関節炎治療剤「エンブレル」の後続品であり、昨年に世界で9兆ウォン以上を販売した。2011年に買収したメディソン(現在のサムスンメディソン)を中心とする医療機器事業もまた、積極的なM&Aで事業発展の速度を高める状況だ。GEやフィリップス、シーメンスなど医療機器メジャー企業が成長を得たのと同様なシナリオだ。

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