アパレル、続々と「セール縮小」に動く納得の裏事情 以前から指摘されていた商慣習の問題に変化

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商品構成について、50%は過去から継続しているデザイン、40%は同じ造作で少しデザインが変わったもの、10%はまったく新しいデザインという構成をとる。半年をワンサイクルにして、すべての商品を入れ替えるシステムをとってきたアパレル業界においては異例なやり方と言える。

また、セールは基本的にやらない方針を貫いてきた。もともとプロパーでの消化率が高いのに加え、シーズンを過ぎたからといってセールせず、そのままの価格で売り続ける。それでもきちんと買い手がつくという。

大きく変わる「服の存在価値」

お客にとって服の存在価値は、もはや「シーズン限りの流行」「このシーズンで着倒す」にあるのではなく、「気に入ったからずっと着たい」「素敵なデザインだから着てみたい」という意識になっている。一方で、コロナ禍のさなかで「ファッションはこれから必要ない」「アパレル業界はダメになる」といった極端な意見を耳にする機会も多かった。

確かにアパレル業界の一部では、高度経済成長来の成長体験をもとにしたビジネスを過剰化させ、時代の流れやお客の意識を置き去りにしていた側面もある。が、コロナ禍という大きな転換点を得て、慣習という枠組みを越え、抜本的なところから改革していく姿勢が見えてきてもいる。

コロナ禍がひと山越えたこともあり、街中のアパレルショップは賑わっているし、過去最高の売り上げをはじき出している百貨店もある。いつの時代も、変化を恐れず前に進んでいる企業には明るい未来が拓けていく。アパレル業界のこれからに期待したい。

川島 蓉子 ジャーナリスト

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かわしま ようこ / Yoko Kawashima

1961年新潟市生まれ。早稲田大学商学部卒業、文化服装学院マーチャンダイジング科修了後、伊藤忠ファッションシステム入社。同社取締役、ifs未来研究所所長などを歴任し、2021年退社。著書に『TSUTAYAの謎』『社長、そのデザインでは売れません!』(日経BP社)、『ビームス戦略』(PHP研究所)、『伊勢丹な人々』(日本経済新聞社)、『すいません、ほぼ日の経営。』『アパレルに未来はある』(日経BP社)、『未来のブランドのつくり方』(ポプラ社)など。1年365日、毎朝、午前3時起床で原稿を書く暮らしを20年来続けている。

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